転職するならいま!障害者採用が「売り手市場」である3つの理由と必要な準備

売り手市場

現在、障害者の転職市場は「売り手市場」といわれています。民間企業における障害者の法定雇用率は2018年4月から2.2%となりましたが、2021年3月までには2.3%、そして今後はさらなる引き上げも予想されるでしょう。ダイバーシティを促進する社会の流れも影響して、障害者雇用に対する関心は年々高まっています。このような背景から障害者の採用に力を入れている企業は増加しているため、転職や就職がしやすい状況にあります。今回の記事では、障害者がはたらく現状や、企業の変化、障害者がスムーズに転職活動をすすめるために必要な準備についてご紹介します。

01.データで見る、民間企業における障害者の就労状況

厚生労働省の「令和元年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業に雇用されている障害者の数は560,608.5人で前年より25,839.0人増え、16年連続で過去最高となっています。また採用された人のうち、身体障害者は2.3%、知的障害者は6.0%、精神障害者は15.9%、対前年比で増加しています。なかでも精神障害者は、2018年4月より雇用義務の対象となったことや、精神障害者保健福祉手帳の所持者数が増えたことに伴い、とくに伸び率が大きくなっています。

民間企業における障害者の雇用状況

出典:厚生労働省 「令和元年 障害者雇用状況の集計結果」

 実雇用率も2.11%と8年連続で上昇していますが、法定雇用率を達成している企業の割合は48.0%に留まっています。半数以上の企業で法定雇用率が達成できていない状況です。

02.障害者の転職が「売り手市場」となっている理由

近年、障害者の転職市場が「売り手市場」といわれているのはなぜでしょうか。ここでは3つの理由にわけてご紹介します。

改正障害者雇用促進法による影響

障害者雇用促進法の改正により、従業員数が45.5名以上の企業は障害者を雇用する義務があります。これにより、障害者採用に積極的な企業が増えているようです。また、改正後は雇用分野での「障害者差別禁止」が義務付けられました。障害があるというだけで「採用しない」「給料が安い」「教育・研修を受けさせない」などの不当な取り扱いが禁止されたことで、企業では多様な障害種別の人を受け入れるための意識改革や採用の準備がすすんでいます。

少子高齢化による働き手不足

日本は深刻な働き手不足の状態にあります。総務省の「平成29年版 情報通信白書」によると2015年に1億1913万人だった日本の人口は、2053年に1億人を割ると予想されています。このような状況のなか、障害者の活躍は、日本経済成長に欠かせないものとなってきているようです。企業は障害者採用で得た人材を「いかに企業の戦力にしていくか」「ノウハウを身につけていくか」について取り組むことで、人手不足を解決に導く可能性を見出しています。

ダイバーシティ(人材の多様性)促進の広がり

グローバルな流れに加え、CSR(企業の社会的責任)への関心の高まりを背景に、ダイバーシティ(人材の多様性)の促進に取り組んでいる企業が増えています。障害者をはじめ制約のある人に活躍してもらい、企業価値を高めていきたいと考える企業も多く、制度や労働環境を整備が進んでいるようです。また誰もが使いやすい商品やサービスであるユニバーサルデザインを開発するために、障害者を積極的に採用する企業も増加しています。

03.障害者転職市場の変化に対応する企業の取り組み

人材不足解消のため障害のある方も戦力として積極的に採用していくために、はたらく環境の改善をすすめている企業も増えています。ここでは、障害者採用に関する企業の変化をご紹介します。

合理的配慮の提供に対する意識の浸透

障害者採用に積極的な企業では、「募集・採用時」から「採用後」まで、障害者がその能力を発揮できるように、必要な配慮と措置を講じなければならないという意識が高まっています。たとえば、「面接時は就労支援機関の職員等の同席を認める」「業務指導や相談に関して担当者を定める」「出退勤時刻や休憩、休暇に関して、通院や体調、状況に合わせて適切に配慮する」などさまざまです。障害者と企業は配慮に関する認識を共有し、具体的な対策をともに考えるなど、定着のための取り組みが行われています

外部機関との連携

外部機関との連携を図り、専門家の力を活用している企業もあるようです。障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所などと協力しながら、転職がスムーズにすすむよう転職希望者を支援しています。生活や日々の悩みなどにも寄り添い、長くはたらくための環境整備が図られています。

採用要件を緩和する企業の増加

障害者採用が思う通りにすすまないと課題を感じている企業は少なくありません。障害者採用を推進する企業のなかには、障害への正しい知識と理解を深め、採用ターゲットの見直しをはじめています。採用ターゲットの見直しは採用要件の緩和につながり、それにより障害者採用の枠は徐々に広がっていきます。

04.障害者が転職を成功させるために準備しておきたいこと

希望する転職先を見つけられるよう、転職の前にしっかり準備しておきたいですね。ここでは、障害者がスムーズに転職活動をすすめるために準備しておきたいことをご紹介します。

自己理解を深め、希望要件を整理する

「自分自身の障害特性」と「はたらく上で必要な配慮は何か」など、まずは自己理解を深めることからはじめましょう。その上で「どのような仕事をしたいのか」「どのような条件・環境ではたらきたいのか」といった希望要件の整理を行います。就労移行支援事業所では、職場で必要とされるスキルはもちろん、体調管理の方法やコミュニケーションスキルなどの職業訓練を受けることができます。応募書類の作成や面接対策など転職活動のサポートは、転職支援サービスや職業訓練センター、ハローワークなどでも行われているので、ぜひ活用してみてください。

転職・就職理由を明確にする

転職・就職活動の応募書類のなかで、履歴書の「志望動機」を重視する人事・採用担当者は多い傾向にあります。求職者が「転職先で何をしたいのか」を知るためでもありますが、「なぜ当社を選んだのか」というのも採用する側としては大切なポイントとなるからです。応募する企業のホームページや求人情報、幅広いメディアから情報収集するなど、企業研究をしっかり行い、「この会社で活かせるスキルは何か」「どのような業務に携わりたいのか」など、明確で具体的な志望理由を書くようにしましょう。

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多くの企業では、障害者を受け入れるため、採用方法の見直しや意識改革がすすめられています。障害者の転職市場が「売り手市場」といわれる状況でも、自分にあったはたらきやすい会社へ採用されるためには、採用される側の準備が必要です。希望する企業への転職が成功するよう、希望要件や配慮内容などをしっかり整理し、積極的にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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