特例子会社とは?制度の概要とはたらく上でのメリット・デメリット

和気あいあいとした職場

障害のある方の就職先といえば、一般企業の障害者雇用を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、近年増えている「特例子会社」ではたらくという選択肢も用意されています。特例子会社とはどのような企業で、障害のある方がはたらく上でどのようなメリットがあるのでしょうか。
この記事では特例子会社の概要やはたらくメリット・デメリット、特例子会社への就職に向いているのはどんな方かなどをご紹介します。

特例子会社とはどんな制度?企業の「障害者雇用」の違いは?

まず、特例子会社の制度概要と、一般企業における障害者雇用とどのように異なるかについて見ていきましょう。

特例子会社とは

特例子会社とは、障害者の雇用に特別な配慮を行い、所定の要件を満たすことで厚生労働大臣の認可を受けて親会社の一事業所とみなされている子会社を指します。なお、特例子会社に属する従業員は親会社に雇用されているとみなされます。
厚生労働省の資料「特例子会社制度の概要」によると、特例子会社は令和3年6月1日時点で全国に562社があり、31,163名の障害者が雇用されています。

「特例子会社」と企業の「障害者雇用」の違いは?

一般企業の障害者雇用と特例子会社とで、雇用形態や業務内容において制度上の違いはありません。ただし、一般企業の障害者雇用枠の中ではたらく場合、職場には障害者ではない方も数多くはたらいています。
その一方で、特例子会社は障害者の方を雇用することを目的とした会社のため、職場ではたらく障害者の方の数が多い傾向にあり、障害のある方がはたらきやすい環境が整っています。障害のある方にとって、特例子会社のほうが個人の事情などによるはたらき方の変化や、予想外の状況が発生したケースにおいても対応しやすいと考えられます。

特例子会社ではたらくメリット

障害のある方が特例子会社ではたらくことには、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、特例子会社に転職・就職してはたらくことのメリットをご紹介します。

職場環境が整っている

特例子会社は障害のある方を雇用する目的で設けられている会社のため、障害者がはたらく上での環境が整えられている点が大きな特徴です。例えば、施設内のバリアフリー化や、従業員の体調変化のこまめなチェックなどが挙げられるでしょう。
また、特例子会社では親会社から障害者に適した業務だけを任されるケースも多く、障害特性に合ったはたらき方が可能な職場も多数あります。

支援制度が充実している

一般的な特例子会社では、社内に相談員や専門の担当者が常駐しているか、定期的に派遣されています。他にも、社外の専門医と綿密な連携が図られている会社が多いなど、障害がある従業員のための支援制度やサポート体制が充実している点もメリットです。

柔軟な勤務体制

在宅勤務の様子

支援や制度が整っていることにとどまらず、柔軟なはたらき方が可能な点も特例子会社ではたらくメリットです。例えば、職場までの通勤が難しい場合、在宅勤務やテレワークではたらく選択肢が用意されているケースもあります。また、職場勤務が必要な場合でも、ラッシュ時間帯を避けた時差出勤やフレックスタイム制を選べるなどはたらき方はさまざまです。

障害者への業務上の配慮

職場環境や通勤に向けた配慮にとどまらず、業務における配慮もきめ細かくなされている点は特例子会社のメリットです。例えば、業務ごとに詳細なマニュアルが用意されていることや、個々の従業員に合わせ業務量の調整を行ってくれていることなどです。
先に述べたとおり、特例子会社は障害のある方がはたらくことを前提としているため、個々の特性に適した業務を任せてもらえる可能性も高いでしょう。

コミュニケーションが活発になる

特例子会社では、同じ障害のある方とチームを組んではたらいたり、障害者同士で助け合ったりしやすい環境も整っています。障害の有無や障害特性の違いによるコミュニケーション上の問題が解消され、従業員同士の意思疎通が円滑に行えることで職場や業務体制に活気が生まれます。

特例子会社ではたらくデメリット

障害のある方がはたらく上でメリットの多い特例子会社ですが、デメリットや注意すべき点についても確認しておく必要があります。特例子会社のデメリットとしては、どのようなことが挙げられるのでしょうか。

スキルアップが難しいケースもある

職場によりますが、障害特性に合う業務を厳選して任されることではたらきやすさは実現できる反面、新たな挑戦の機会などが限定的になってしまう場合もあります。幅広い知識や高度なスキルを習得し、ステップアップを図りたいと考えている方には、物足りなさを感じることがあるかもしれません。

給与の面で一般企業よりも劣ることがある

障害者の雇用に関して常に挙がる話題の1つに「配慮と処遇のバランス」があります。これは、職場が障害に対する配慮を手厚くすると従業員の処遇へコストが回らず、従業員の処遇を重視すると配慮への手間やコストが回りにくいという一説です。このため配慮を重視する傾向のある特例子会社においては、一般企業の障害者雇用と比較し給与が低めに設定されている場合もあります。
配慮と処遇のバランスを取るため、事前に会社側と話し合いをしておくことが大切です。

就職や転職の選択肢が限られてくる

そもそも一般企業と比較して特例子会社の絶対数が少ないため、求人数自体がどうしても少ない傾向にあります。このため、特例子会社への転職・就職を前提に求人を探すと、選択の幅が狭くなってしまうことがあります。

特例子会社と障害者雇用、どちらがおすすめ?

特例子会社ではたらくか、障害者雇用枠で一般企業に勤めるかを迷っている方も多いと思います。ここでは特例子会社ではたらくことに向いている方と、一般企業に障害者雇用で就職することが向いている方についてご紹介します。ただし向き不向きはあくまで個人差によるため、一般的な傾向の目安程度としてご参考にしてください。

特例子会社が向いている人

特例子会社が向いている方は、以下のような項目に当てはまる方です。

自身の障害特性に合わせた業務がしたい
ご自身の特性に適した業務をしたい方であれば、特例子会社ではたらくことがおすすめです。
特例子会社で多い職種や業種は、事務職・清掃業務・サービス業・製造業・印刷業・情報通信業などが挙げられます。障害特性に適した業務を任せてもらえることも多く、適した職種や業種も多いと考えられます。希望する職種・業種が特例子会社にある場合、特例子会社への就職が向いているでしょう。

給料よりも安定した環境ではたらきたい
特例子会社は、障害者の方への配慮がされているため、はたらきやすい環境が用意されています。そのため、高い給料を得るよりも安心感を得つつ安定した環境ではたらきたいという方は、特例子会社がおすすめです。

同じ障害者の方とはたらきたい人
一般企業の障害者雇用の場合は、障害者ではない方が多いため、はたらく上で不安に感じる方もいることでしょう。特例子会社は、障害がある方が多くはたらいているため、安心感を得ることができます。同じ障害者の方とはたらきたいという方には、特例子会社が向いているでしょう。

一般企業の障害者雇用が向いている人

一方で、以下のような志望動機で転職・就職を考えている場合は、一般企業の障害者雇用ではたらくことが適しているといえます。

専門分野ではたらきたい
好きな業種・職種や得意分野、特定のスキルなどがあり、それらに携われる職場ではたらきたいという具体的な希望をお持ちであれば、多くの業種・職種を選択できる一般企業の障害者雇用が適しているでしょう。

給料をどんどん上げていきたい
すべてに当てはまるとはいえないものの、長く勤めて評価を高めることで昇給が見込める可能性は、どちらかというと一般企業の障害者雇用のほうが高いとされています。

バリバリはたらいてスキルアップをめざしたい
はたらくことが好きで、新しい知識や技能をどんどん習得したいと考えている方は、やはり職場の選択肢が幅広く実績にともなう評価が得られやすい一般企業の障害者雇用が適しているでしょう。

就職・転職活動時は自分に合った職場を探すことが大事

上記でご説明したことは、すべての方に当てはまるとは限りません。「自分はこうだからこちらが良い」と一概に判断せず、ご自身が希望するはたらき方や職場環境、職種・業種などをじっくり比較して志望先を検討しましょう。

障害者の方におすすめな特例子会社の求人の探し方

障害のある方が特例子会社への就職を考える場合、求人数が少なく一般の就職情報だけでは希望の職場を見つけにくいことがあります。このため、特例子会社を前提として就職活動をする場合は、就職アドバイザーや転職サポートといったプロの力を借りて職場探しをすることがおすすめです。専門のエージェントに依頼することで、さまざまな特例子会社の求人から、ご自身に最適な職場を提案してもらえます。

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まとめ

法定雇用率の継続的な引き上げにともない、この先も障害者がはたらく職場は増えるとみられています。中でも特例子会社は、業務や環境面で障害のある方への配慮が手厚く、はたらきやすいといわれています。
しかし、特例子会社の求人数は多くないため、障害者向けの就職サポートを受けながらの職場探しがおすすめです。
特定子会社への就職をお考えの方は、ぜひdodaチャレンジまでお気軽にご相談ください。

公開日:2022/2/1

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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