発達障害のグレーゾーンとは?仕事上における問題点と安心してはたらくためのポイント

グレーゾーン

発達障害という言葉が広く知られるようになり、障害自体に対する理解も進みつつあります。しかし障害の度合いは人によってさまざまです。そのなかで、発達障害の傾向があっても確定診断がされないままの「グレーゾーン」という状態が存在することをご存じでしょうか。
この記事では、発達障害における「グレーゾーン」という状態についてご説明し、よくみられる特性やグレーゾーンの方でも受けられる社会的な支援などをご紹介します。

発達障害の特性がある「グレーゾーン」

グレーゾーンについて解説する前に、まずは発達障害について簡単にご説明します。発達障害はその特性によって、自閉スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動障害(ADHD)、学習障害(LD)に分類されます。
ここでは、発達障害の種類ごとにそれぞれの特性をご説明します。

自閉症スペクトラム障害(ASD)

対人関係やコミュニケーションへの苦手意識、大きい音や騒音が苦手な聴覚過敏などの感覚過敏といったものが主な特性です。興味関心の偏りがある場合も多く、強いこだわりがあるため状況の変化に対応しにくいことも少なくありません。

注意欠陥・多動障害(ADHD)

ADHDの特性としては、集中力や注意力に乏しい自覚を持っていたり、自分自身の落ち着きのなさに困っていたりするケースが挙げられます。また周囲の状況をうかがわず、後先を考えない衝動的な行動をとってしまうケースもあります。

学習障害(LD)

知的発達に遅れなどがないことが確認できているものの、文字の読み書きや計算など、特定の学習が極端に苦手なケースです。

発達障害の「グレーゾーン」とは何か

発達障害の特性を3つの症状に分けて簡単にご紹介しましたが、「発達障害のグレーゾーン」とはどのような状況を指すのでしょうか。

一般的に、グレーゾーンとは「黒でも白でもない、曖昧な状態」のことを指します。つまり、発達障害のグレーゾーンとは「発達障害の傾向は認められるが、それに対し障害として正式に診断が下されていない状態」のことです。上記で挙げた発達障害の特性や症状はみられるものの、医学的な診断基準をすべて満たさないため確定診断が下されてない状態を指します。発達障害の症状には幅があるため、医師の見解や受診時の体調などから、診断基準を満たさないと判断されていることもあると考えられるでしょう。

「グレーゾーン=症状が軽い」ではない

グレーゾーンとはいえ、その言葉だけで症状自体を大したことではないと思ってしまうことは早計です。発達障害の診断基準を満たしていないだけで、症状や困りごとが軽いとは限りません。
グレーゾーンの方のなかには、発達障害のある方と同程度の支援を要するケースも少なくありません。

大人でみられるグレーゾーンの特性

ノートとペンとぐしゃぐしゃに丸められた紙

発達障害のグレーゾーンの方のなかには、社会人として仕事をしている大人の方も数多くいます。大人のグレーゾーンの方によくみられる特性としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 遅刻やミスが多い
  • 同僚や上司とうまくコミュニケーションがとれない
  • 作業の指示をすぐに理解できない
  • 悪意はないのに場の空気を読めない発言をしてしまう
  • 1つの作業に集中できず気が散ってしまう など

子どものころはこのような特性や行動があっても、大人や周囲に「子どもだから」と大目にみてもらえることも多いため、幼少期には本人も保護者も発達障害やグレーゾーンの傾向に気が付いていないケースも多いようです。しかし、社会に出るとより厳しく自己管理や成果が求められるようになることにより特性が表面化し、人間関係や仕事面などでトラブルに発展してしまうケースもあります。

グレーゾーンの方の仕事上における問題点

発達障害のグレーゾーンの方が仕事をする上で、困りがちなことや困難になる点として以下のようなものがあります。

周囲の理解を得られにくい

グレーゾーンの方は障害の診断が確定していないため、社会的には健常者とみなされます。このため公的な支援を受けられず、周囲からも理解や支援を得ることが難しくなります。

人間関係で悩みやすい

グレーゾーンの方も発達障害の特性があるため、業務上の大まかな指示や曖昧な表現の内容を理解することが難しい場合があります。このため認識の齟齬が生じ、意思疎通がうまく図れなくなる可能性もあります。相手へ的確に指示することが難しい場合もあるでしょう。
このようなグレーゾーンの特性によってコミュニケーションが上手にとれないことで、人間関係の悪化を招くおそれがあります。

好きな作業だけに集中してしまう

好きなことや興味がある作業には集中できるものの、興味のない作業には集中できず気が散ってしまう方も多いです。仕事そのものに支障をきたしてしまうことも考えられます。

二次障害を併発してしまうケースがある

人間関係や仕事に関するトラブルが頻発することで精神的に疲弊してしまい、うつ病などの二次障害を併発してしまうケースもあり得ます。

二次障害は、グレーゾーンの方全員が発症するわけではありません。しかし、一定数の方が二次障害を発症しているのは事実です。
上記のように大人になってから仕事に関することで二次障害を発症することもあれば、幼少期の経験から二次障害につながってしまうケースもあります。例えば、幼少の頃にグレーゾーンの特性のために親や先生に叱られる機会が頻繁にあったという方もいます。悪意もなく、改善したくてもうまくいかない状況のなか失敗を叱られ続けると、自信をなくし、自己肯定感が下がってしまいます。
コミュニケーションに対する苦手意識の強さから、コミュニケーションそのものへの不安や恐怖を覚えることも少なくありません。このような状況をそのままにしていると、うつ病や不安障害、パニック障害などの二次障害に発展するおそれがあります。
特にグレーゾーンの場合は診断されていない分だけ、周囲からの理解を得られにくい面がネガティブ要素となる可能性も高いでしょう。しかし、周囲の理解や適切なサポート、生活上のさまざまな工夫などによって二次障害を回避できる場合があるため、行動を起こすことは重要といえます。

グレーゾーンの方が安心してはたらくためのポイント

橋渡し

グレーゾーンの方が職場で困りごとを抱えないためには、グレーゾーンの特性を理解して支援してくれる人を身近に作ることが大事です。
発達障害の診断を受けて障害者手帳を取得していれば、さまざまな公的支援や就労サービスが利用できますし、生活・仕事の両面で相談することもできます。しかし、診断が下りないグレーゾーンの場合は、障害者手帳を取得することができません。

一般的に、発達障害者向けの公的な支援サービスは医師の診断書や障害者手帳が必要となるものが大半です。しかし、すべてがそうというわけではなく、確定診断を受けていなくても利用できる支援もあります。
また、うつ病等の二次障害を併発している場合は、それらの疾患によって障害者手帳を取得できる可能性があるため、ぜひ医療機関に診断書の発行などについて相談してみてください。障害者手帳を取得している場合は、障害者雇用枠で就労することで、「障害が理由で仕事に支障をきたしたときに配慮を受けられる」などのメリットもあるため、一度検討されてみるとよいでしょう。

次の項目では、発達障害グレーゾーンの方が受けられるさまざまな社会的支援についてご紹介します。

グレーゾーンの方が利用できる支援機関

障害者手帳を持っていなくても利用できる支援機関と、受けられるサービスには以下のようなものがあります。

ハローワーク

ハローワーク(公共職業安定所)では、障害者の方向けの就職相談を受け付けています。障害者手帳を持っていない方が障害者雇用枠で就職することはできませんが、グレーゾーンの特性を考慮した上での就職相談は障害者手帳がなくても行えますので、必要に応じて利用してみてください。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、就職を目指す障害者の方が仕事に必要なスキルや知識を身につけるためのサポートを受けられるほか、就職に関する相談などもできる場所です。障害者手帳を持っていない方でも、お住まいの自治体に「障害福祉サービス受給者証」の申請をして交付を受けられれば、就労移行支援事業所を利用することができます。グレーゾーンの特性によって仕事での困りごとが生じている方は、就労移行支援事業所を利用してみるのもひとつの手です。
⇒就労移行支援とは?

発達障害者支援センター

全国にある発達障害者支援センターは、発達障害がある方の自立や社会参加を支援する機関です。発達障害者支援センターへ相談するにあたっては障害者手帳の有無は問われませんので、発達障害者支援センターがお近くにある方は一度足を運んでみると良いでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、就労と生活の両面から障害者の方をサポートする機関です。こちらも障害者手帳の有無を問わず相談できます。

Neuro Dive Online(ニューロダイブオンライン)

Neuro Dive Online(ニューロダイブオンライン)は、「AI・機械学習」「データサイエンス」などの先端ITをインターネット上で学べる有料学習プログラムです。先端IT特化型就労移行支援事業所である「Neuro Dive(ニューロダイブ)」を母体とし、2021年7月にサービスをスタートしました。
Neuro Diveの学習プログラムのすべてをオンライン受講でき、ITやビジネスに関するスキル取得に向けて学ぶことができます。専門スタッフによるサポートを受けながら、ご自身のペースで学習カリキュラムを履修していくことができるため、就労移行支援事業所に毎日通えない方でも受講可能です。障害者手帳の有無を問わずに受講でき、現在在職中の方もご利用できます。
「パソコンを使うのが好き」「データサイエンスに興味がある」という方は、ITスキルを身につけてご自身に合った職場を見つけるのに役立てられるNeuro Dive Onlineのご利用をご検討ください。

まとめ

発達障害のグレーゾーンの方には、グレーゾーンゆえの困りごとも多いことと思います。周囲の理解やサポートを求めることも大切ですが、ご自身が特性を生かして活躍できる職場や職種を見つけることもひとつの方法です。
受けられる公的支援が限定的であることでお悩みの方も多いかもしれませんが、民間の就職支援サービスのなかにもグレーゾーン向けの選択肢があることを知っておくと役立ちます。大人の発達障害のグレーゾーンについてお悩みで、ご自身の得意分野を存分に伸ばして就労に役立てたい方はNeuro Dive Onlineなどの学習プログラム・支援サービスのご活用を考えてみてはいかがでしょうか。

公開日:2022/12/27

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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