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【イベントレポート】なぜ大手企業からスタートアップへの転職が増えているのか?
~大手企業からスタートアップ企業へ、そして自らが起業・投資経験を持つ麻生要一氏と紐解きます~

スタートアップ企業を巡る国内の動きが加速しています。2020年には東京都が全国のスタートアップを支援する「NEXs Tokyo」を始動。そして2021年、dodaも連動する経産省のスタートアップ支援事業「SHIFT(x)」が開始されました。スタートアップ企業で新たなキャリアを築きたいという方のために、求められるスキルから、戦略的な市場価値向上まで、転職マーケットの現況を交えてお伝えするウェビナーを2021年8月に開催しました。

本記事では、転職・起業・投資それぞれの経験がある麻生要一氏とdodaエージェント事業部事業部長の大浦征也による、スタートアップ界隈についてのディスカッションの模様をレポートします。

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  • ゲスト:麻生 要一 氏
    起業家・投資家・経営者

  • モデレーター:大浦 征也
    パーソルキャリア株式会社 執行役員/
    dodaエージェント事業部 事業部長

イベントレポート【前編】企業の選び方や活躍の方法は?

前編では、マッチするスタートアップ企業の選び方や、活躍するために必要なマインドなどについてのディスカッションの模様をレポートします。

スタートアップ企業は今、採用を強化しているのか?

  • 大浦:
    大手企業で活躍されている方がスタートアップへ転職するケースが増えているように思います。背景としては、スタートアップ企業の採用強化があるんでしょうか?

  • 麻生氏:
    採用の強化をどう定義づけるかということもありますが、大手企業からの転職は増えているように見えますね。大きなトレンドとして、スタートアップ企業の資金調達額は伸び続けています。特に今は1社あたりの調達額が増えています。

    スタートアップエコノミーが盛り上がりはじめたころは、創業からまもないスタートアップ企業に投資がされていたんですが、昨今で投資されているのは、シリーズBやシリーズCと呼ばれる、会社として成熟してきた企業です。これらの企業に大きなお金が投資されていて、大型資金調達した会社は、IPOに向けた最終グロースのために採用に資金を投下します。だから採用規模が拡大しているように見えていると言えます。

大手企業出身者がマッチするスタートアップ企業は?

  • 大浦:
    全体論としては拡大していると言えるスタートアップ採用に、大手企業の多くのビジネスパーソンが活躍の場を移そうとやってくるのはなぜでしょうか?

  • 麻生氏:
    昔から大手企業出身の方は一定数活躍していましたが、スタートアップ企業がより多くの方に認知されるようになった結果、スタートアップ企業でのキャリアアップの可能性をもっと感じてもらえるようになってきたのかなと思います。ただ、大手企業出身の方が活躍できるステージは、ビジネスモデルが確立して事業を伸ばす段階に来たシリーズBくらいからになりますね。

    シリーズAだとプロダクトはできた、それをどう伸ばしていくかというグロースドライバーを発見する時期です。その前のシード段階はプロダクトが成立していなかったり、その前のエンジェルの段階はそもそもなにもない状態です。これらの時期はアントレプレナーシップがないと立ち行かないので、自分自身のスキルやキャリアをどこで活かせるか考えることが大切です。

  • 大浦:
    転職者の方々も、身近な方がスタートアップ企業に転職する実例を見て、どういう転職の仕方がうまくいくかを見てきて、スタートアップ企業に飛び込む人が増えてきたのかもしれませんね。

スタートアップ企業で活躍できるのはどんなマインドの人?

  • 大浦:
    大手企業からスタートアップに転職して、ボードメンバーとして活躍できる人はいるんでしょうか?

  • 麻生氏:
    活躍できるケースはもちろんあります。例えば、前職の大手企業で担っていた業務内容や、関わっていた産業領域がそのスタートアップ企業の事業内容と非常に近い場合などです。

  • 大浦:
    大手企業で得た業界知識や実務経験と親和性が高い会社であれば、活躍のチャンスがありそうですね。

  • 麻生氏:
    シリーズA以降のスタートアップなら、大手企業からの転職で入って活躍している人も多いと思います。ボードメンバーは創業時にそろっているわけではなく、企業の成長に伴って増えていくんですよ。創業時はCEOとCTOだけというケースが多くて、そこからセールスを採用して、シードくらいになると売り上げが立ってきます。そこから20人くらいの組織になるとチームリーダーが必要になり、リーダーをまとめるマネジャー、そしてCOOが必要になってきます。
    そしてマーケティングが重要なフェーズになるとCMOが必要になったり、上場を見据えると資金調達や財務に特化したCFOが必要になったりしてくるので、事業が大きくなる過程で必要になるポジションを外部から採用していくようになります。このフェーズになると、ヘッドハンティングなども活用するようになりますね。

イベントレポート【後編】得られる経験や目指せるキャリアパスは?

後編では、スタートアップで得られる経験や目指せるキャリアパスについてのディスカッションの模様をレポートします。

スタートアップ企業で求められるスキルとは?

  • 大浦:
    大手企業とスタートアップ企業では、求められるスキルは異なると思いますが、どれくらいのレベルのスキルが必要ですか?

  • 麻生氏:
    シリーズBくらいのスタートアップ企業を想定してお話をすると、まず社員個々人の業務内容のレベルは非常に高いと言えます。創業から事業を拡大していく段階に入ったこのフェーズでは、大企業の一線で通用するレベルのスキルが求められます。

    重要なのが、そのスキルが大企業の中だけではなく、他社でも転用できるポータブルスキルかどうかです。スタートアップ企業への転職を目指すなら、自分の純粋なスキルで戦えるか、汎用的なスキルを磨けているかどうかを日々の仕事のなかで意識することが大切になります。

  • 大浦:
    プロダクトの力ではない純粋な自分自身のスキルで勝負できるよう、スキルをポータブル化することが大切ですね。

入社直後から、自ら仕事をつくり出していく姿勢が必要

  • 大浦:
    入社から業務に取り組んでいくまでの流れも、大手企業とスタートアップ企業では大きく異なるのではないですか?

  • 麻生氏:
    そうですね、自分から価値をつくり出していけるアントレプレナーシップが、シリーズBくらいのフェーズでは必要になります。シリーズBくらいになると社内のルールや業務フローが整備され始めることが多いですが、完全に整備されているとは言えないことが多くあります。入社初日に何をやったらいいか、誰に相談したらいいか、必要なツールはどう手に入れるかなど、マネジメントされるのを待たずに自分から周囲の人にはたらきかけていく行動力が必要です。

スタートアップだからできる経験や目指せるキャリアパスは?

  • 大浦:
    スタートアップ企業だからこそできる経験や、目指せるキャリアパスについてお話しいただけますか?

  • 麻生氏:
    メジャーなキャリアパスとしては、スタートアップ企業で事業を成長させる経験を積んで、自分自身も起業家を目指すというパターンがまずあります。ほかには、役職者としてスタートアップ企業に入社して上場まで成長させ、上場会社の役員・CXOを目指すというのも魅力的なルートです。会社が数十名の規模のときに部長やマネジャーとして入社し、事業の成長に貢献していければ役員・CXOへの昇進も比較的早く目指せます。そして役員としてその会社を上場まで成長させることができれば、東証1部上場企業の役員として大きな報酬を手にすることもできます。

    東証1部上場の大企業の中で、昇進して役員を目指すのは確率的に非常に難しいですが、スタートアップ企業では役員・CXOへ昇格できるチャンスが大企業と比較して多いです。もちろん数十名規模の会社を千人以上の上場企業まで成長させる過程は非常に大変ですが、ビジネスパーソンとして非常に大きな経験になると思います。

    もしその会社が上場するまでに役員・CXOになるのがかなわなかった場合、やりきったと思ったタイミングで、その会社よりさらに前のステージの会社に転職するという方法もあります。そうすると、入社時の役職が上がる可能性があり、入社時点で執行役員やボードメンバーに入れるかもしれません。一度会社を上場させている経験は、同じく上場を目指すスタートアップ企業にとって大きな魅力になります。

  • 大浦:
    数十人規模の会社を千人以上の上場企業にまで成長させた経験は、多くの企業から求められるでしょうね。

スタートアップへの転職を志す方へのメッセージ

  • 大浦:
    スタートアップ企業への転職を目指す方に、一言メッセージをお願いします。

  • 麻生氏:
    スタートアップ企業が求める人材の数に対し、まだ転職者の数は全然追いついていない状況です。スタートアップ企業としては転職を歓迎していて、早く転職してきてもらいたいと思っています。

    スタートアップ企業での仕事は、ビジネスパーソンとしての経験値を上げてくれますし、給与が上がるチャンスも多く、社会貢献もできます。スタートアップ企業での経験が、将来別の大企業への転職に生きることもあります。ご自身のキャリアにとって大きなメリットがたくさんあるので、すぐにでも挑戦してほしいですね。活躍できるチャンスは大いにありますよ。

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