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もっと、自分らしい働き方が見つかる女性向けイベントWoman's Career Meeting Report

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掲載日:2016年1月4日

世界のエリートが学んできた自分の考えを「伝える力」の授業

「doda女性のための転職フェア」が2015年11月20日(金)、21日(土)の両日、東京の渋谷ヒカリエにて開催されました。会場内で講演会も開かれ、各界で活躍する女性や、dodaの女性キャリアアドバイザーが、今後のキャリアや仕事に役立つテーマについて講演しました。

今回はその中から、THINK-AID主宰 狩野みき氏による「世界のエリートが学んできた 自分の考えを『伝える力』の授業」と題する講演の模様を、Woman Career編集部がレポートします。

profile 講師プロフィール

狩野 みき

狩野 みき
THINK-AID主宰

中学・高校時代をドイツのブリティッシュ・スクールにて過ごす。慶應義塾大学法学部卒、慶應義塾大学大学院博士課程修了 (英文学) 。慶應義塾大学、聖心女子大学、ビジネス・ブレークスルー大学にて講師を務める。主に小・中学生を対象とした、「自分で考える力」を伸ばすためのスクールTHINK-AIDを主宰。著書に『世界のエリートが学んできた 自分の考えを「伝える力」の授業』(日本実業出版社)、『「自分で考える力」が育つ 親子の対話術』(朝日新聞出版)など多数。2012年、TED×Tokyo Teachersにて「日本の子どもたちにもっと考える力を」という趣旨のTEDトーク “It’s Thinking Time”(英文)を披露し好評を博した。小学6年と小学2年の2児の母。

グローバル化と多様化が進む今は
「話し手責任」がより問われる時代

この講演のタイトル「世界のエリートが学んできた 自分の考えを『伝える力』の授業」は、私が2014年に出版した書籍のタイトルでもあります。今日は、書籍に記した内容や、私自身の経験も交えながら、「伝える」ということをテーマに、グローバリゼーションが進む現在、ビジネスの場面で女性が何に気をつければ良いのかをお話ししたいと思います。

「伝える」ことを考える上で、まず知っておいていただきたいのが、次の2つです。

話し手責任 と 聞き手責任

「話し手責任」とは、話し手には聞き手が理解しやすいように話す責任がある、という考え方です。聞き手が話を理解できなかった場合には、話している側に問題があると見なされます。英語はこの「話し手責任」の文化です。一方、「聞き手責任」は、聞いている側が、話の内容や意図を察して理解する責任を負っている、という考え方です。聞き手が話を理解できなかったときは、聞いている本人の責任と見なされます。日本語は「聞き手責任」の文化です。

この2つは文化の違いであり、どちらが良い・悪いということではありません。ただし、ビジネスのシーンにおいては、日本でももっぱら「話し手責任」が重視されます。また、グローバル化が進めば、多様な文化や慣習を持つ人々と一緒に仕事をすることになるでしょう。すると、自分自身の考えや意図を明確に伝え、相手に理解をしてもらう努力が不可欠になるため、日本でも「話し手責任」の考え方はより強くなっていきます。まずは、その点を認識しておくことがとても大切です。

自分らしさや自分の良さを知ることは
「伝える力」を高める重要な柱の1つ

「話し手責任」の考え方が強まる現在ですが、「どうすればうまく伝えられるのか」と悩む人は少なくありません。私はそんな方々に、自分はどんな思いを持っていて、何を相手に伝えたいのか、その先にどんなゴールを目指しているのかを考えるようにお話ししています。しっかりと考えているうちに、「伝えたい」と思う気持ちはどんどん強くなり、やがて言葉が口をついて出るようになる。それが、「伝える力」を身につける第一歩だと考えているからです。

伝えたい内容を考えられたら、次は「どう伝えるか」が問題です。私が考える、グローバル時代にビジネスの場で大事になってくる「伝え方」のポイントはこれです。

話し手責任自分らしさ

「話し手責任」は先ほど触れたとおり、話し手の側が聞き手に分かりやすく伝えるという責任のことで、これを全うすることがポイントの1つです。そしてもう1つが、「自分らしさ」を活かし、自分の言葉で伝えることです。多様化が進む現代社会の中では、自分らしさを出すことがより大切になっています。

ここで、「自分らしさって何だろう?」と迷う人もいるでしょう。自分らしさとは、「自分の良さ」とも言い換えることができます。自分自身を見つめ、自分の長所や強みは何なのかを分かっておくことはとても大切です。特に面接などの場面では、自分の強みを認識しているかどうかが、アピール力や説得力を大きく左右します。日本には謙虚を美徳とする文化があるため、自分の良さをアピールすることをためらいがちですが、謙虚であることと自分らしさを出すことは、決して相反することではありません。両立できるのだということを、ぜひ知っておいてください。

それでも「自分らしさや自分の良さが分からない」という人は、自分が短所だと思っていることを思い浮かべてみてください。そして、その短所を反対側から見てみるのです。例えば「せっかちである」という短所は、「期限を守ることができる」という長所になり得ます。逆に「のんびりしている」ことが短所なら、「周りに流されず、自分のペースを大切にできる」ことが長所だと言い替えることができるでしょう。普段から、自分を客観視し、「短所」を「長所」に置き替える作業をしておくことは、「自分らしさを出しながら伝える」力を高めることにつながります。

「伝え方」に正解はなく、ケースバイケース
だからこそ相手の立場に立つことが大切

「伝え方」を考える上で、しばしば問題になるのが「根拠が先か」「結論が先か」という点です。そこで、次のような場面を想定してみてください。

1カ月前からじわじわと続いていた仕事上のトラブルがとうとう一大事になってしまい、これまで何も伝えていなかった部長に報告しなければならなくなりました。もちろんトラブル自体も報告しなければなりませんが、まずは報告が遅れたことから切り出したいと思っています。部長に伝えたいのは次の根拠と結論です。

根拠:不確定要素があまりに多かった

結論:部長にはこの件、まだ報告しておりませんでした

この場合に皆さんは、根拠を先に言うべきだと思いますか。それとも結論が先でしょうか?

実は「ケースバイケース」がこの答えです。「ビジネスの場なら結論が先」と思われる人は多いでしょう。確かに、「話し手責任」の考え方に照らし合わせると、先に結論を明確にした方が良いことになります。しかし、場合によっては、根拠を先に述べてこちらの事情や背景を理解してもらわないと、相手に聞く耳を持ってもらえない可能性もあります。相手との距離感や相手の人柄、自分のポスト、案件の重要性、さらには、伝えることで何を目指さなければならないのか、などのさまざまな要素を的確に判断した上で、ケースバイケースで伝え方を選ぶ必要があるのです。

それに加え、特に女性の場合に気をつけたいのは、根拠を必要以上に長々と話さないこと。たくさんの根拠を話そうとする方が多いのですが、根拠となる情報が多すぎると、相手は結論が何なのかが分からなくなってしまいます。反対に、結論を重視し過ぎて根拠が抜け落ちてしまっても、相手に正しく理解してもらうことはできません。

どの順序で、どんな言葉を使い、どのように伝えれば良いのか、という「伝え方」に絶対の正解はありません。だからこそ、伝える際には「相手の立場に立って考える」ことがとても重要だと私は考えています。なぜなら「伝える」という行為は、相手があって初めて成り立つもの。聞き手責任の文化に慣れ親しんだ私たち日本人が話す側に立つときには、特に留意しなければいけないポイントです。一方で、日本には「察しの文化」があり、日本人には相手の立場に立つことを得意とする一面もあります。その特性をうまく活かし、なおかつ「話し手責任」を意識することで、日本の女性の「伝える力」はもっと素敵に磨かれていくはずだと信じています。

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