アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)とは?その特徴と向いている仕事を解説

いきいきと仕事をしているビジネスパーソン

「なぜかいつも職場での人間関係がうまくいかない」「複数の業務指示を受けると混乱してしまう」といった仕事での困りごとは、アスペルガー症候群の特性と、仕事のミスマッチから生じている可能性があります。
一方で、アスペルガー症候群の特性を理解し、特性に合った仕事を選ぶことで、強みにしてはたらくことも十分可能です。
この記事では、アスペルガー症候群の方に向いている仕事について、障害の特徴とあわせて詳しく解説していきます。すでにアスペルガー症候群と診断を受けている方や、その傾向があると感じている転職・就職希望者の皆さんは、ぜひ仕事選びの参考にしてみてください。

アスペルガー症候群とは?

アスペルガー症候群

アスペルガー症候群(Asperger Syndrome)とは、生まれつきの発達の仕方に凸凹があり、その特徴と周囲の環境との異なりから日常や社会生活に困難を抱える発達障害のひとつです。

発達障害はいくつかのタイプに分けることができますが、2023年現在は「アスペルガー症候群」や「アスペルガー障害」という診断名は使われていません。2013年にアメリカ精神医学会が作成した『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)という、精神疾患の診断基準を定めたマニュアルによって、アスペルガー症候群・アスペルガー障害は「自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)」の診断基準、診断名に統一されるようになりました。

「アスペルガー症候群」という診断名は使われなくなりましたが、DSM-5の発表前に診断を受けている場合や、「ASDの中でもアスペルガーの傾向が強い」という表現で使用されることもあるため、ここでは「アスペルガー症候群」という名称で取り上げます。

アスペルガー症候群の特徴について

アスペルガー症候群の特徴は、「社会的コミュニケーションおよび対人関係における障害」「限定した常同的な興味、行動および活動」の主に2つです。

【アスペルガー症候群の特徴1】社会的コミュニケーションおよび対人関係における障害

アスペルガー症候群の人は、他人とのコミュニケーションに困難を抱えることが多くあります。

身振りや顔の表情から相手の気持ちを読み取ることに難しさがあったり、コミュニケーションが一方的であったり、周囲が困惑するような行動をとったりすることがあります。いわゆる「暗黙のルール」や「その場の空気を読む」ということが不得意で、言葉を文字通り解釈して行動する傾向が多く見られることがアスペルガー症候群の特徴です。そのため冗談やお世辞、皮肉や比喩が通じない、とされることも少なくありません。
また、耳からの情報処理も苦手な傾向があり、他人との会話についていけないこともあります。

【アスペルガー症候群の特徴2】限定した常同的な興味、行動および活動

アスペルガー症候群には、特定の物事に対しての没頭やこだわりが強いという特徴があります。

特に自分なりの日課や手順にこだわることが多いため、急な変更や予定外の事柄に対する臨機応変な対応が苦手です。決まったルールやスケジュール通りに進まない場合には困惑してしまい、ときにはパニックに陥ることもあります。仕事などで「要領が悪い」と受け取られる場面も少なくありません。
一方で、興味を持ったことに対しては、高い集中力や記憶力を発揮します。自身が納得できるまで追求するため、特定の分野で深い知識を持っている人が多いことも特徴です。

アスペルガー症候群と自閉症の違い

自閉症とは、アスペルガー症候群と同様にDSM-5が作成された際に「自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)」に統合された古い診断名です。DSM-5が作成される前に使用されていた旧診断基準(DSM-4)では、自閉症は次の3つの特徴を持つ障害とされていました。

  • 1.対人関係の障害
  • 2.コミュニケーションの障害
  • 3.限定した常同的な興味、行動および活動

上記すべての特徴が、何らかの症状により3歳までに現れた場合には「自閉症」と診断されていました。

一見するとアスペルガー症候群の特徴と同じように思われますが、大きな違いは「言語の発達」にあります。自閉症には言語発達の遅れがみられ、知的な遅れも伴う場合があることが特徴です。アスペルガー症候群では、基本的に言語発達の遅れは見られません。

近年では、自閉症とアスペルガー症候群のいずれも「自閉スペクトラム症(ASD)」と診断され、一人ひとりの特性や症状に合った治療や支援が行われています。「スペクトラム」とは「連続体」という意味ですので、明確に分けて診断することは大変難しいとされています。
大切なことは「その人がどんなことができて、何が苦手なのか」ということですので、「自閉スペクトラム症(ASD)」と診断された方が、ご自分が自閉症なのか、アスペルガー症候群なのかを気にする必要はないでしょう。

アスペルガー症候群とASD(自閉スペクトラム症)の違い

ASD(自閉スペクトラム症)とは、アスペルガー症候群や自閉症を包括した、発達障害の名称です。
以前は「広汎性発達障害」のカテゴリーの中で自閉症、アスペルガー症候群と名称が分けられていましたが、それぞれに共通した特性が見られることから、DSM-5の発表以降まとめて表現されるようになりました。

アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)と仕事

「アスペルガー症候群は仕事が続かない」と言われる理由

ITエンジニア

アスペルガー症候群における困りごとは、本人の特性のみによって起きるわけではありません。本人の特性と、職場などの環境の「相互作用」によって生じているのです。

そのため、本人の特性に合わない職場環境だったために仕事に苦手意識を持ってしまい、欠勤が続いたり、退職に至ってしまったりするケースも少なくありません。一方で、本人の特性に合った環境に身を置くことで、困りごとが小さくなり、持っている知識や能力を最大限に活かすことができます。
つまり「アスペルガー症候群=仕事が続かない」というわけではなく、自身の特性を理解し、特性に合った環境を見極めることが大切だと言えるでしょう。特性に適した職場環境であれば、継続してはたらくことも十分可能です。

アスペルガー症候群の方に向いている仕事

アスペルガー症候群の方は、本人の特性の強さにもよりますが、次のような特徴を持った仕事が向いていると言えるでしょう。

  • 興味関心の高い分野の仕事
  • マニュアルやルールが整備されている仕事
  • 高い集中力を維持することが求められる仕事
  • 記憶力を活かせる仕事
  • 視覚情報の強さを活かせる仕事
  • 一人でできる仕事

アスペルガー症候群の方は、得意不得意がはっきりしている傾向が強いため、得意な分野を選ぶことで他の人には真似できないような高い能力を発揮できる可能性が大いにあります。自身のこだわりやルーティーンを活かせる仕事も良いでしょう。
また、対人関係に苦手意識を抱えやすい傾向があるため、一人で黙々と取り組む作業系の仕事も向いていると言えます。独自の感覚を活かした表現活動・芸術系の仕事などでも活躍が期待できるでしょう。

【向いている仕事の職業名(一例)】
  • 経理・財務などの専門事務職
  • 設備点検
  • 校正校閲
  • プログラマー
  • システムエンジニア
  • CADオペレーター
  • Webデザイナー
  • アニメーター
  • カメラマン
  • ファッションデザイナー
  • 建築士
  • 弁護士
  • 研究者
  • 大学教員
  • 工場などのライン作業員
  • 清掃員 など

アスペルガー症候群の方に向いていない仕事

アスペルガー症候群の方は、その場に合わせた柔軟な対応が苦手な傾向があります。そのため、次のような特徴を持つ仕事はできれば避けた方が良いでしょう。

  • 予測不可能なことに対応しなければならない仕事
  • 臨機応変な対応が求められる仕事
  • 複数の要求を短時間で処理する必要がある仕事

アスペルガー症候群の方は、一人で黙々と取り組む作業は得意な傾向にありますが、チームで取り組む仕事は苦手な方が多くいます。もしアスペルガー症候群の方がチームで仕事を行う場合には、本人の役割や、チームの目標を言葉や図で明確に説明してもらうと良いでしょう。

【向いていない仕事の職業名(一例)】
  • レジ打ち
  • 旅行代理店
  • 車のディーラー
  • コールセンター業務
  • 営業
  • 接客業 など

アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)の方の仕事上で起こりやすいトラブルと対処法

アスペルガー症候群の「社会的コミュニケーションおよび対人関係における障害」「限定した常同的な興味、行動および活動」という2つの特性により、職場で起きやすいトラブルとその対処法について解説します。

アスペルガー症候群の特性によって仕事上で起こりやすいトラブル

  • 曖昧な指示が理解できない
  • 臨機応変な対応ができない
  • チームワークや場の空気を読んだ判断ができない
  • タスクの優先順位の判断ができない など

「この辺で」「いい感じに」というような曖昧な指示や、最初に指示したルールから変更があった場合の対応などができないことがあります。
また、強いこだわりがあるため、自分の中のルールを優先したり、周囲のアドバイスや意見を聞けなかったりします。周りの人が忙しそうでも、自分の業務がおわったら定時に帰ったり、相手の発言や冗談を言葉通りに受け取ってしまったりと、暗黙のルールが理解できずに人間関係のトラブルにも陥りやすいと言われています。

アスペルガー症候群のある人の仕事での対処法

仕事上でのトラブルには、自分で対応策を準備しておくとよいでしょう。マニュアル化されていない仕事や口頭での指示に対しては、メモを取り自分でマニュアルを作り、周囲のメンバーに確認するとよいでしょう。文書化することで、口頭の指示をもらうより、落ち着いて振り返ることができます。

周囲との意思疎通がうまくできない場合は、思ったことをそのまますぐ口に出さないように心がけ、関係が悪化しそうな場合には、上司など第三者に相談してみましょう。見た目で分かりづらい障害であり、社会から「変な人」だと疎外されてしまうこともあるため、職場ではその特性を伝えておくだけでも、周囲とのコミュニケーショントラブルが回避できるかもしれません。

アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)の方が仕事を探す際のポイント

アスペルガー症候群の方が転職・就職活動を行う場合には、自分の特性や適性を知ることが大切です。まずは自身がアスペルガー症候群(ASD)の特徴を理解し、得意なことを把握することで、特性を「強み」として活かしながらはたらくことができます。また、不得意なことが分かっていれば、周囲に助けを求めやすくもなるでしょう。

アスペルガー症候群の方は、その特性ゆえに社会生活の中で多くの困難を抱えやすい傾向にあります。特に転職・就職時には当事者だけで問題を解決するのではなく、周囲の理解や協力を仰ぐことが重要です。
仕事選びだけでなく、面接でつまずくことも考えられるため、総合的にサポートしてもらえる支援機関の利用をおすすめします。専門家のアドバイスやサポートで、不安を取り除きながら転職・就職活動を進めていきましょう。

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まとめ:アスペルガー症候群の特性に適した仕事を選ぼう

アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)の方がはたらくことにおいて、向いている仕事、できれば避けたほうが良い仕事についてご紹介しました。
アスペルガー症候群は基本的に言語発達に遅れがないことから、大人になって仕事を始めた際に困難に直面し、初めて診断を受ける方も少なくありません。
そのため、自身の特性や仕事の適性を理解することが、スムーズな転職や就職、安定した勤務への近道となります。ぜひこの記事の内容を転職・就職活動に活かしてください。

公開日:2023/8/9
更新日:2024/3/19
監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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