パーソナリティ障害のある方が抱える仕事の悩みとはたらき方とは?就労サポートについてもご紹介

パーソナリティ障害

パーソナリティ障害は、精神疾患のひとつです。この障害がある方は、周囲との軋轢や無理解から悩みや困りごとを抱える方が少なくありません。
この記事では、パーソナリティ障害のある方が抱えやすい仕事の悩みとともに、はたらき方や就労をサポートする施設、制度を詳しくご紹介します。

パーソナリティ障害とは

パーソナリティ障害とは、個人の行動や思考、認知の著しい偏りから、社会生活や日常生活に重大な支障が生じる精神疾患です。その多くは、青年期から成人早期に発症するとされています。

パーソナリティ障害のある方は、大多数の人とは異なる反応や行動から、仕事や日常生活で周囲との溝や軋轢を感じやすいことが特徴です。対人関係のトラブルから「仕事がうまくいかない」「長くはたらくことができない」と悩む方も少なくありません。さらに、パーソナリティ障害のある本人だけでなく、周囲の方にも大きな苦痛をもたらすこともあります。
パーソナリティ障害のために生きづらさを強く感じることで、うつ病、社交不安障害、依存症などの合併や併存がみられることもあります。

パーソナリティ障害のある方が抱える仕事の悩みや困りごと

悩む女性イラスト

仕事で生じやすい悩みや困りごとは、主に対人関係に表れます。
パーソナリティ障害のある方が自分の偏りに気づくことは難しく、本人にとっては「当たり前」の考えや行動が、なぜか周囲の方との軋轢を生んでいるという事態に陥ってしまうのです。

パーソナリティ障害により仕事上で周囲の方が困ってしまう発言をしたり、こだわりの強さから衝突を招いたりする場面が続くと、同僚や取引先との関係悪化につながってしまいます。周囲の方との衝突を繰り返すうちに、職場に居づらくなるケースも少なくありません。

このような対人場面の苦労体験から、パーソナリティ障害のある方は、コミュニケーションが安定しにくく、ストレスを感じやすい傾向にあります。
過去の経験から「自分一人では何もできない」という無力感に苦しんだり、「この人も自分を嫌いになるに違いない」と疑心暗鬼になってしまったりと、対人関係において偏った認知を強くしてしまうのです。

さらにパーソナリティ障害の二次障害として、対人関係のストレスからうつ病などの精神疾患を併発しやすい傾向にあります。

パーソナリティ障害の種類

パーソナリティ障害は、DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル)によると、A群、B群、C群の3グループに分けて把握することができます。
DSM-5とは、2013年に刊行されたアメリカ精神医学会によるマニュアルで、国際的な診断基準として日本でも用いられています。

A群

  • 妄想性パーソナリティ障害
  • シゾイドパーソナリティ障害
  • 統合失調型パーソナリティ障害

A群に分類されるパーソナリティ障害は「奇妙で風変わり」な様子が特徴です。他者とのかかわりに非積極的な傾向があり、行動や態度を客観的に見ると「少し変わっている」「個性的」と感じられることが多いタイプです。

B群

  • 境界性パーソナリティ障害
  • 自己愛性パーソナリティ障害
  • 反(非)社会性パーソナリティ障害
  • 演技性パーソナリティ障害

B群に分類されるパーソナリティ障害は、感情の起伏が激しく、演技的な表現が特徴です。気持ちが変わりやすく不安定なため、周囲の方が巻き込まれやすいのがB群タイプのパーソナリティ障害です。

C群

  • 依存性パーソナリティ障害
  • 強迫性パーソナリティ障害
  • 回避性パーソナリティ障害

C群に分類されるパーソナリティ障害は、内向的で不安や恐れを抱いている様子が特徴です。不安から気持ちが不安定になり、不安を避けるための行動を取る傾向があります。他者依存に陥りやすいのもこのグループの特徴です。

パーソナリティ障害で障害者手帳は取得できる?

パーソナリティ障害のみの診断では、治癒する可能性が高いことなどを背景に、原則として障害者手帳の認定対象にはなりません。ただし、パーソナリティ障害の合併症として、うつ病や統合失調症などの精神疾患がある場合は、手帳の交付対象になり、取得に伴うサービス利用が可能となるケースがあります。

例えば「境界性パーソナリティ障害」の場合、神経症と統合失調症の境界のような症状があり、精神疾患の病態を伴うことが多くあります。また、うつ病や不安障害から受診に至り、実はパーソナリティ障害が潜んでいることもあります。

パーソナリティ障害のために生きづらさを感じ、他の精神障害を合併しているケースでは、医療機関を受診する機会も多くなります。障害者手帳の取得ができるかどうか、主治医に相談してみることをおすすめします。

パーソナリティ障害のある方のはたらき方

対人関係でストレスや困りごとを抱えやすいパーソナリティ障害のある方がはたらき続けるためには、以下のことに注意する必要があります。

パーソナリティ障害と付き合いながら仕事を続ける場合

治療を続ける

パーソナリティ障害は、適切な治療を続けることで認知や行動の偏りを改善し、苦痛を軽減することができます。治療が長期間にわたる場合もありますが、症状を放置したり、治療を自己判断で中止したりするとストレスが重なり、他の精神疾患が表れる可能性もあります。そのため、治療の必要性を認識して取り組むことが重要です。

会社に事情を伝える

職場の上司や同僚に、パーソナリティ障害について伝えておくことで、突発的な体調不良や通院を考慮してもらえたり、障害特性にあった配慮が得やすくなったりといったメリットがあります。その一方で、障害理解への困難が生じることも考えられます。

生活リズムを整える

パーソナリティ障害のある方にとって、ストレスを溜めないことは重要です。生活リズムを整え、十分な睡眠と健康的な食事をとることがストレスの軽減につながります。

相談相手や相談先をもつ

パーソナリティ障害のある方はコミュニケーションに苦手意識があり、対人関係が不安定になりやすい傾向があります。そのため家族や友人だけでなく、医療機関や支援窓口など、複数の相談先を持っておくことが精神的な安定につながります。

心身が疲れている場合は療養が最優先

いくら体調管理に気をつけて仕事を続けたとしても、何かのきっかけで体調がコントロールできなくなることもあります。特に心身が疲れている場合は主治医に相談したうえで、療養を最優先にしましょう。療養期間も主治医に従って決めると良いでしょう。
症状によっては休職や退職を選び、いったんは治療に専念することも病状回復のためのひとつの手段です。

パーソナリティ障害で休職・退職時に利用できる支援制度

転職エージェント

パーソナリティ障害で、休職・退職をした場合、支援制度を利用できるケースがあります。

自立支援医療制度(精神通院医療制度)

パーソナリティ障害の治療のために定期的、継続的に通院している場合は、かかった医療費の自己負担料を軽減できる制度です。
疾患の種類や程度、所得に応じて、1ヶ月当たりの自己負担上限額が設定されています。

障害者手帳

先述でも解説のとおり、パーソナリティ障害だけでは取得が難しい障害者手帳ですが、他の精神疾患を伴う場合は、取得できるケースがあります。ただし、申請には各種条件があるため、まずは主治医にご相談ください。手帳を取得することでさまざまな福祉サービスを利用でき、税金の優遇制度や公共交通機関の割引なども受けることができます。

障害者年金

障害者年金とは、障害や疾患のため、生活や仕事に支障が出たときに支給される年金です。障害認定基準に則り、該当する等級が認定される仕組みですが、手帳と同様にパーソナリティ障害だけでは認定が難しく、認定には条件があります。障害者年金についても、まずは主治医に相談しましょう。

傷病手当金

傷病手当金とは、加入している健康保険組合による、病気休業中の報酬を保障するための手当金です。労災保険の対象以外の理由による休職に限られますが、保険の加入期間に応じて、平均収入額の3分の2の金額、または月額28〜30万円のいずれかが、最長1年6ヶ月支給されます。

パーソナリティ障害のための就労サポート

パーソナリティ障害をはじめ疾患や障害のある方で、はたらきたいと考えている方は、就職活動を支援する専門機関の利用がおすすめです。

ハローワーク

ハローワークには、障害や疾患のある方の就労活動を支援するための専門窓口が設置されており、パーソナリティ障害のある方も対象です。
障害や疾患について専門的な知識をもつ職員が相談に応じ、求人の紹介なども行います。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、パーソナリティ障害を含む障害や疾患のある方の一般企業への就労をサポートする事業所です。事業所に一定期間通所し、就労に向けた職業訓練や面接練習、履歴書作成などの一連をサポートし、就職後の定着支援も行っています。

障害者雇用

パーソナリティ障害とともに他の精神疾患も併発しており、障害者手帳の交付を受けている場合は、障害者雇用枠での就労も選択肢に入れることができます。職業準備性が整い、合理的な配慮を受けながら就労を目指す方は検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

パーソナリティ障害は、認知や思考、行動、コミュニケーションなどのパーソナリティ機能の偏りから仕事や生活に支障が生じる精神疾患です。対人関係で困りごとを抱きやすい障害ではありますが、適切な治療や支援を受けることで、仕事を続けることは可能です。仕事でパーソナリティ障害による悩みを抱えている方は、ぜひ専門の支援機関に相談してみてください。

公開日:2023/12/11

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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