トランスジェンダーの就活・職場の悩みとは?キャリアアドバイザーがQ&Aに回答

トランスジェンダーのシンボルマーク

トランスジェンダーの方の中には、職場や就職活動での服装・ふるまい方・人間関係などに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。このような悩みを周囲に相談できず、自分の心の中に溜め込み続けている方もいらっしゃることでしょう。
この記事ではトランスジェンダーの方が抱え込みがちな、就職活動や仕事におけるお悩みについて考えていきます。実際によく寄せられるお悩みに対して、国家資格であるキャリアコンサルタント資格を持つキャリアアドバイザーがQ&A形式で回答していますので、職場でのお悩みや就職活動に関するお悩みをお持ちのトランスジェンダー当事者の方やご関係者の方は、ぜひご一読ください。

トランスジェンダーとは

トランスジェンダーとは、性自認(こころの性=性別の認識)と、身体的な性別(からだの性=出生時に判断された性)が一致していない方を指す言葉で、セクシュアルマイノリティを表す「LGBTQ」の中の「T」に該当します。
例えば、性自認が男性であっても身体的性別は女性の方や、その逆といった方がトランスジェンダーに当てはまります。

それらに加え、性自認が必ずしも男性か女性かでくくれないトランスジェンダーも存在します。例えば、性別を「男性でも女性でもない」と自認する方は、「性自認が中性/無性のトランスジェンダー」に含まれます。中性/無性のトランスジェンダーの方は「Xジェンダー」や「ノンバイナリー」と呼ばれます。
ただし、性の多様性に関してはまだ議論の最中で、不確定要素が大きい部分もあるため「Xジェンダー(ノンバイナリー)はトランスジェンダーに含まない」という考え方も存在します。

LGBTQとは

LGBTQとは、以下のセクシュアルマイノリティ(性的マイノリティ、性的少数者)の方を指す総称のひとつです。

  • L(レズビアン):性自認が女性で、性的指向が女性の方
  • G(ゲイ):性自認が男性で、性的指向が男性の方
  • B(バイセクシュアル):性的指向が男性・女性の両方である方
  • T(トランスジェンダー):身体的な性別と性自認が異なる方
  • Q(クエスチョニングおよびクィア):クエスチョニング=性自認が不確定な方、クィア=その他のセクシュアルマイノリティ

以前は末尾の「Q」がない「LGBT」と表記されていましたが、近年は「LGBTQ」と表記されることが増えてきました。これはセクシュアルマイノリティがL・G・B・Tだけではない、より多様な形で存在するという認識が広まったためです。

性同一性障害との違い

トランスジェンダーという言葉を聞き、「性同一性障害」という言葉を思い浮かべる方も多いことでしょう。しかし、性同一性障害とトランスジェンダーでは言葉の意味合いが異なります。
現行のICD-10分類上の「性同一性障害(新分類上は性別不合)」は、性別適合手術、つまり身体の性を外科手術で変えることを望んでいる人に対して診断に用いる医学用語です。一方トランスジェンダーの中には、性自認と身体の性の一致を望んでいない方もいます。また、「LGBTQ」は当事者たちにより命名され、普遍化し、発展してきた言葉です。 性自認と身体の性が不一致であっても、それは障害ではなく多様なセクシュアリティの一つであり、個々が尊重されるべきという考えに基づいています。つまり、性同一性障害よりもトランスジェンダーのほうが広義の概念であるといえます。「性同一性障害=医学的な病名」であったのに対し、「トランスジェンダー=その人の個性・特徴を表す言葉」であると考えると分かりやすいでしょう。

トランスジェンダーの方は職場で悩みを多く抱えている

職場で孤立する人

LGBTQの方は職場で悩みを抱えることが多いですが、中でも特にトランスジェンダーの方は悩みが大きくなりやすい傾向にあります。

トランスジェンダーの方の職場での悩みが大きくなりやすい理由

L・G・Bの方の場合、ご自身の性的指向に関する発言がない限り、セクシュアルマイノリティであることが周囲に知られることはあまりないでしょう。しかし、トランスジェンダーの方は外見の印象が戸籍上の性別と異なるケースが多いため、周囲に違和感を持たれる可能性があります。そのため、職場で悩みを抱えるケースが多くなっています。
「SOGIハラ」というハラスメントも近年問題になっており、トランスジェンダーの方が職場でそのターゲットとなってしまうケースも見られます。SOGIハラに関しては、以下の記事で詳細を解説しています。

SOGIハラの標的にされたトランスジェンダーの方が、うつなどの精神疾患を発症するケースも少なくありません。

トランスジェンダーの方が職場で抱える具体的なお悩みQ&A

ここでは、就業中のトランスジェンダーの方からよくいただく相談やお悩みに、LGBTフレンドリー企業への就職・転職支援を数多く行っているdodaチャレンジのキャリアアドバイザーがお答えします。

Q:自分の性自認をアウティングされました。

A:適切な相手へ、早期に相談をしましょう。

アウティングは重大なプライバシー侵害です。アウティングを放置すると、本人の精神的・身体的な不調の増大やアウティング被害の拡大、さらには差別やハラスメント等の二次被害が発生するリスクが高まります。
企業の相談窓口やお住まいの都道府県労働局、公的・民間の支援団体、信頼できるキャリアアドバイザー等に相談し、適切な措置について検討していくことが大切です。ご自身のケアも忘れないでくださいね。

Q:職場に理解のある方がおらず、相談できる人がいません。

A:公的機関・民間の支援団体やキャリアアドバイザーに相談してみましょう。

セクシュアルマイノリティへの風土面の理解醸成ができていない差別や偏見がある職場では相談がしづらいものです。ある調査によると、はたらく上で困ることがあった場合の相談先についての問いでは、「相談先がない」が最も高く、レズビアンの30.9%、ゲイの40.7%、バイセクシュアルの37.6%、トランスジェンダーの44.7%が、相談先がないと回答しています。
2020年6月に施行されたパワハラ防止法に相談窓口の設置が明記されたこともあり、LGBTQに関する取り組みの一環として、相談窓口を社内外に設置する企業も増えてきています。また、ご自身や企業のことをよく知っているキャリアアドバイザーに相談することも有効です。決して1人で抱え込まずにしかるべき相手へ相談しましょう。

Q:上司にカミングアウトをしたら、暗に退職を促されました。

A:セクシュアルマイノリティであることを主たる理由として退職をほのめかすことは、合理的な理由がないため、毅然とした態度を取りましょう。

セクシュアルマイノリティであるか否かに関わらず、会社側が自主退職をすすめる「退職勧奨」には強制力はありません。雇用契約の終了は、従業員が合意した場合にのみ可能です。退職勧奨を受けた従業員は、退職するか否かを自由に選べるため、ご自身に退職の意志がなければ会社に残ることができます。
また、セクシュアルマイノリティであることを主たる理由として従業員を一方的に解雇することを正当化する合理的な理由は見出しがたいです。退職勧奨に従う必要性はないため、毅然とした態度で断るか、明確な返答をせずに人事などに相談をしましょう。

Q:仕事をするときの服装で困っています。

A:まずは就業規則を確認した上で、制約の範囲や程度について人事や上司と話し合いましょう。

服装や髪型、化粧などは「性表現」と言われ、見た目や言動等で表す性のことです。これは個人の大切なアイデンティティの一部であり尊重されたいことです。
ただし、企業の就業規則では企業秩序の維持等の都合から、セクシュアルマイノリティに限らず、服装や髪型などの身だしなみについて規定されている場合があります。このような事情から、従業員側と企業側で折衷案を検討していく必要があるかと思います。
どのように相談したら良いか分からない場合には、まずは従業員側と企業側の事情をよく知っているキャリアアドバイザーへ相談することも一案です。

Q:LGBTQであることを隠してはたらいているのが苦しく、また、バレたら変な目で見られるのではないかと日々不安を感じています。

A:信頼できる相手にまずは相談してみましょう。(企業の相談窓口やALLYコミュニティ等)

「セクシャリティを偽らずに自分らしくはたらきたい」、「ホルモン治療や性別適合手術を近日中に受ける」といった事情から、自身がトランスジェンダーだとカミングアウトしたいと思う方は多くいらっしゃいます。一方で、カミングアウトすることで職場の人と接しづらくなってしまうという不安からカミングアウトを躊躇している方や、カミングアウトをしないと決めている方もいます。
ある調査では、レズビアンの8.6%、ゲイの5.9%、バイセクシュアルの7.3%、トランスジェンダーの15.3%が職場の誰か1人に伝えていると回答していますが、いずれもその割合は1割程度にとどまっています。企業の相談窓口やALLYコミュニティ、カミングアウトをしている当事者やLGBTQに理解のあるキャリアアドバイザーなど、相談のハードルが低い相手から相談してみることをおすすめします。

トランスジェンダーの方は就職・転職時にも困ることがある

緊張した状態で採用面接に臨んでいる人

就職や転職を考える際も、トランスジェンダーに起因するお悩みが出てくることは少なくありません。これは、就職活動に付き物の「面接」や「職場・職種選び」などに、性別が大きく結びついているためです。トランスジェンダーの方が就職や転職で抱えがちなお悩みには、以下のようなものがあります。

  • 性自認や性表現に合ったスーツが着られないため面接の服装に悩んでしまう
  • セクシュアルマイノリティに対する差別や偏見のない職場を選びたいが、見つけにくい
  • 自認している性別に適した職場ではたらきたいが、なかなか実現できない
  • トランスジェンダーであることを開示したいが、伝え方が難しく困っている など

トランスジェンダーの方が就職・転職で直面するお悩みQ&A

職場でのお悩みQ&Aと同様に、就職活動や転職活動の際にトランスジェンダーの方が直面することの多いお悩みにdodaチャレンジのキャリアアドバイザーが回答します。

Q:履歴書の性別欄に何と書けば良いのか悩んでいます。

A:空欄でも大丈夫です。無理に男女の型に当てはめず、ご自身のスタンスに合わせて記載方法を検討していきましょう。

書類選考の段階から偽りなく伝えたい場合、性別欄を空欄*1のままにして、備考欄へ戸籍性や性自認について記載するのも1つの手段です。また、面接や入社後の様子を見てどのように伝えるか決めたい場合、一旦は戸籍性のとおりに記入して、状況を見て判断するのも良いでしょう。
*1 2021年4月に厚生労働省が新たに示した履歴書の様式例では、性別欄が男・女の選択式から任意記載へと変更されています。これにより、未記載、つまり空欄での提出が可能となりました。

Q:トランスジェンダーに理解のある会社をどのように探したら良いかが分かりません。

A:セクシュアルマイノリティの方向けの就職・転職支援サービスを使って求人を探してみましょう。

求人サイトは数多く存在しますが、自分が何を基準に企業を探しているか、という点から使用する就職・転職支援サービスを選んでみましょう。
【就職・転職エージェントの一例】
JobRainbow:LGBTQ向けの転職・就活の求人サイトで、LGBTフレンドリー度という基準を設け、LGBTフレンドリーな企業を紹介しています。
dodaチャレンジ:身体・精神・知的障害があり、かつLGBTQをはじめとしたセクシュアルマイノリティ当事者の方の転職・就職エージェントです。

Q:どのタイミングで伝えるべきなのかが分からないです。

A:カミングアウトをするかしないかは個人の自由であり、またその必要性も個人によって異なりますので、伝えるタイミングは個人で決めて大丈夫です。

例えば、転職を機にカミングアウトをする場合、「戸籍性ではなく性自認どおりのお手洗い・更衣室を利用したい」、「性自認どおりの服装で就業したい」、「通称名を使用したい」といったような入社当日から配慮が必要な事項については、入社前に伝えた方がスムーズです。
伝える相手は、職場環境や企業の制度に詳しい人事担当者の方が良いかと思います。伝えるタイミングとしては、選考の初期段階である書類選考や一次面接が良いでしょう。伝える方法としては直接伝えていただいても問題ありませんし、信頼できるキャリアアドバイザーへ相談するのも1つの手段です。

Q:面接時にどのような服装で行けば良いかが分かりません。

A:TPOをわきまえることを前提として、性自認に合わせた服装で基本的には問題ありません。

事前に人事やキャリアアドバイザーに相談しておくと心理的負担が軽減され安心して面接に臨めることと思います。

Q:「あなたみたいな人は、前例がないので採用は難しい」と言われました。

A:セクシュアリティと業務遂行能力は関係ありません。適性や能力で採用選考をしてもらいましょう。また、必要な配慮があれば過不足なく伝えましょう。

厚生労働省が事業者向けに採用選考について示した『公正な採用選考の基本』には、「公正な採用選考を行うことは、家族状況や生活環境といった、応募者の適性・能力とは関係ない事柄で採否を決定しないということ」と書かれています。
また「障害者、難病のある方、LGBT等性的マイノリティの方(性的指向及び性自認に基づく差別)など特定の人を排除しないことが必要です。特定の人を排除してしまうというのは、そこに予断と偏見が大きく作用しているからです。当事者が不当な取り扱いを受けることのないようご理解をいただく必要があります」とも記載されています。
セクシュアルマイノリティと一口に言ってもいろいろな方がいます。適性や能力で採用選考してもらうとともに、必要な配慮があれば過不足なく伝えましょう。
参考:「公正な採用選考の基本」厚生労働省

自分らしくはたらくために、LGBTQ×障害がある「複合的マイノリティ」の方のための転職・就職支援サービスの活用を

トランスジェンダーの方は、就活や就職後の職場で多くの困りごとを抱えがちなのではないでしょうか。悩みを抱えながらはたらくうちに、うつ病などの精神障害を発症したり、悪化したりする可能性も考えられます。
トランスジェンダーの方が精神障害を発症すると、LGBTQ×障害がある「複合的マイノリティ」となり、二重の困りごとやお悩みを抱えてしまうおそれもあるでしょう。

精神障害や発達障害がある方や、トランスジェンダーなどのLGBTQであるゆえ現職でハラスメントなどを経験した方も、ご自身の特性に適した職場を見つけることで自分らしくはたらくことができます。
自分らしいはたらき方を実現したい方のためにLGBTQ×障害がある「複合的マイノリティ」の方のための転職・就職支援サービスがあります。伸び伸びとはたらける環境をかなえるため、ぜひ活用を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回は、トランスジェンダーの方が就活の際や職場で抱えがちなお悩みについて、キャリアアドバイザーの回答をまじえてご紹介いたしました。
トランスジェンダーの方にとって、仕事を続けていくことや就職・転職は、その方法次第で大きなハードルとなってしまうこともあります。トランスジェンダーを含めLGBTQに対する理解があり、差別や偏見のない職場を、一般的な就活のやり方で見つけることは難しいためです。障害のあるトランスジェンダーの方の場合、そのハードルはより高いと感じることでしょう。
障害のあるLGBTQの方のための転職・就職支援サービスを活用し、自分らしくはたらくチャンスを広げてみるという方法もあります。障害者手帳をお持ちで、はたらき方でのお悩みを抱えているトランスジェンダーの方は、ぜひお気軽にdodaチャレンジへご相談ください。

公開日:2022/10/7

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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