身体障害者手帳とは?等級や申請方法、メリットについて詳しく解説

車椅子とデスク

身体に障害のある方が、身体障害者手帳を取得することで、さまざまな支援を受けられます。しかし、申請の方法や等級などが複雑で理解しにくいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、身体障害者手帳の等級や、申請方法、メリットについて詳しく解説します。

身体障害者手帳とは

身体障害者手帳とは、身体障害のある方の自立や社会活動参加への支援を目的とした手帳です。身体障害者福祉法で定められた規定に基づき、一定以上の障害があることが認められた方に対して、都道府県や政令指定都市、中核市が交付しています。

身体障害者手帳の取得は任意ですが、取得することにより、国や自治体によるさまざまな福祉サービスや支援を利用することができます。また、障害者雇用枠での就職や転職を希望する場合は、障害者手帳を就職先に提出する必要があります。

なお、令和3年時点での身体障害者手帳の所持者数は全国で491万98人(※)と、療育手帳や精神障害者保健福祉手帳に比べて、突出した所持者数となっています。

(※)参考:厚生労働省 「令和3年度福祉行政報告例の概況」

身体障害者手帳の対象と等級

対象となる障害の種類

さまざまな身体障害

身体障害者手帳の対象となる障害の種類は以下のとおりです。
①視覚障害
②聴覚または平衡機能の障害
③音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害
④肢体不自由(上肢、下肢、体幹、乳幼児期以前の非進行性の脳病変による運動機能障害)
⑤心臓、じん臓または呼吸器の機能の障害
⑥ぼうこうまたは直腸の機能の障害
⑦小腸の機能の障害
⑧ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能の障害
⑨肝臓の機能の障害

上記の疾患によって障害状態が続いており、日常生活や就労において支援が必要と認められた場合、身体障害者手帳の対象となります。

身体障害者手帳の等級

身体障害者手帳には1〜7級の等級があります。数字が少ないほど障害程度が重いため、1級が最重度の等級です。等級の区分は、身体障害者福祉法で定められている「等級表」(※)に基づき判定されます。
手帳の交付対象は基本的に1〜6級です。しかし7級にあたる障害が複数ある場合や、等級の異なる障害が重複している場合など、障害の組み合わせにより交付対象が変わることがあります。

等級表で定められている、障害の種類による区分は以下のとおりです。
・視覚障害 1〜6級
・聴覚または平衡機能の障害 2〜6級
・音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害 3〜4級
・肢体不自由 1〜7級(体幹のみは1〜5級)
・内臓または免疫機能の障害 1〜4級

(※)参考:厚生労働省 「身体障害者障害程度等級表」

身体障害者手帳の申請方法

身体障害者手帳を取得するためには、申請が必要です。ここからは、身体障害者手帳の申請方法や、申請にあたって必要な書類などについて解説します。
ただし、自治体によって申請方法が異なる場合もあるため、詳細はお住まいの自治体窓口に確認しましょう。

申請窓口・必要書類

申請窓口は、お住まいの自治体に設置されている障害福祉に関する窓口です。
まずは窓口で以下の必要書類を受け取りましょう。自治体によってはホームページからダウンロードできる場合もあります。

必要書類

・身体障害者手帳交付申請書
・身体障害者診断書・意見書
・代理人が申請する場合は委任状

そのほか申請に必要なもの

・顔写真
・個人番号(マイナンバー)カード
・本人確認書類など

申請〜交付までの流れ

申請書を受け取ったあとは、必要書類を確認し作成しましょう。そのあとの主な流れは、「診断書・意見書の作成」「書類提出」「手帳の交付」となります。
ここでは、申請から交付までの流れをみていきましょう。

1.身体障害者診断書・意見書の作成

医師に作成してもらう書類です。身体障害者診断書・意見書は、身体障害者福祉法第15条の規定により指定された医師のみ作成することができます。診断書の作成を依頼する場合は、主治医が指定医に該当するか確認しておきましょう。

2.自治体窓口へ申請書類を提出

申請書や診断書が揃ったら、申請書類を受け取った窓口に、記載済みの書類と顔写真を提出します。本人以外が申請を行う場合は、代理人の本人確認書類と、本人による委任状が必要です。

3.身体障害者手帳の交付

申請後、自治体による審査を経て等級が決定し、手帳が交付されます。申請から交付までの期間は自治体により異なりますが、1ヶ月〜2ヶ月かかる場合が多いようです。

身体障害者手帳に期限はある?

身体障害者手帳は、基本的に有効期限はなく、更新も必要ありません。
しかし、障害の内容や部位によって、障害状態が軽減される可能性がある場合は、再認定が行われます。手帳に再認定日が記載されている場合は、一定期間後に診断書・意見書の再提出が必要です。交付後、自治体からの通知が届いたタイミングで、速やかに更新手続きを行いましょう。
再認定を経て、障害に変化があると認められた場合には、新しい手帳が交付され、等級表の基準に達しないと判断された場合は、手帳の返納が求められます。

更新方法、必要なもの

身体障害者手帳の更新に必要なものは概ね以下のとおりですが、お住まいの自治体によって異なる場合があります。申請前に自治体からの案内を確認しましょう。

更新に必要なもの

・再交付申請書
・身体障害者診断書・意見書(指定医が記入したもの)
・顔写真
・身体障害者手帳
・印鑑、身分証明書(自治体によっては不要)

更新方法

申請書類を作成後、通知元であるお住まいの自治体窓口に申請を行います。申請後、1〜2ヶ月で再認定に基づいた手帳が再交付されます。

身体障害者手帳を持つメリット

身体障害者手帳を取得することにより、得られるメリットはさまざまです。ここでは主な3点をピックアップして解説します。

税優遇や医療費などの助成サービスがある

貯金箱と電卓

障害者控除をはじめとした、所得税や住民税の税優遇があります。金額は手帳の等級により異なりますが、一定額の控除を受けることができます。自動車税や相続税、贈与税も控除の対象です。
また、18歳以上の身体障害者手帳所持者は、国による自立支援医療(更生医療)制度を利用することで、医療費の自己負担が原則1割となります。

このほかにも手帳を提示することで、車いすや補聴器、盲人安全杖などの補装具の交付や購入・修理にかかる費用の助成を受けることができます。手すりをつける、段差をなくすなど、自宅をリフォームするために必要な費用の給付制度もあります。
医療費や補装具など、経済的な負担が増える方にとっては、手帳を取得することで大きなメリットがあると言えるでしょう。

障害者雇用での就職・転職活動ができる

身体障害者手帳は、就職・転職活動においても活用することができます。
企業で促進している「障害者雇用枠」での採用は、障害者手帳を所持していることが条件です。障害者雇用のメリットは、あらかじめ障害の状態や特性を企業に伝えておくことで、入社後の職場環境や業務で必要な配慮を得やすくなるところにあります。
就職・転職活動の際には、一般採用の枠に加えて、障害者雇用枠を選択肢に加えることで、求人の幅が広がります。

就労支援サービスが利用できる

就職・転職活動にあたって、障害のある方が利用できる就労支援サービスも用意されています。
身体障害者手帳を持っていることにより、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センターなど、国や自治体が設置した専用相談窓口では、専門の支援員による相談支援やサポートを受けることができます。

また、民間企業による障害者向けの就職・転職支援サービスの利用も可能です。就職・転職支援サービスとは、専門知識を持ったキャリアアドバイザーによるヒアリングにより、自分の希望や障害に合った就職・転職先を紹介してもらえるサービスです。

就職・転職支援サービスを活用しよう

就職・転職活動を進める中で、障害の内容や特性、企業に依頼したい配慮の伝え方など、不安を抱えたり悩んだりすることがあるのではないでしょうか。自分だけでは企業の実態を把握することが難しく、入社後のミスマッチが起きてしまうことも少なくありません。一人での就職・転職活動に不安なときは、ぜひ障害者向けの転職サービスを利用してみましょう。

dodaチャレンジは、障害のある方の就職・転職に精通した専任のキャリアアドバイザーによるていねいなヒアリングを行っています。企業に積極的にはたらきかけ、障害に合わせた職場環境や業務内容の調整といったアプローチにも力を入れています。

まとめ

身体障害者手帳は、障害の状態や特性において生じるさまざまな困難を軽減し、日常生活をサポートするサービスを受けられるものです。経済面や医療、生活面でのサポートはもちろん、就職や転職の場面でも身体障害者手帳を活用することができます。
身体障害者手帳があることにより、障害理解を得ながらはたらく「障害者雇用枠」での就職・転職も可能です。手帳の取得は任意ですが、ぜひ身体障害者手帳を活用して、自分らしい働き方を見つけてみてはいかがでしょうか。

公開日:2023/9/4

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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