障害者雇用はデメリットしかない?「やめとけ」はウソ!メリットを有効活用する方法

車椅子ではたらく男性

障害のある方がはたらく選択肢の一つに障害者雇用があります。しかし、障害者雇用について調べると「やめとけ」「デメリットしかない」といったネガティブな意見を目にすることがあります。
この記事では「障害者雇用はデメリットしかない」と言われる実態を解説し、障害者雇用のメリットを有効に活用する方法について詳しくご紹介します。

なぜ「障害者雇用はデメリットしかない」「やめとけ」と言われるの?

国が定めている障害者の法定雇用率の引き上げに伴い、障害者雇用数は増加傾向にあります。令和4年の雇用障害者数は61万3,958人と、前年より2.7%増えています(※)。

(※)参考:厚生労働省 「令和4年障害者雇用状況の集計結果」

企業での障害者雇用の促進や雇用数の増加に伴い、障害者雇用のデメリットだけに注目する声も聞かれるようになりました。
しかし、障害者雇用の実態を知ると、実は大きなメリットもあることがわかります。はたらき方の選択肢を狭めないためにも、なぜ「やめとけ」という声が聞かれるのか、解説していきます。

「障害者雇用はデメリットしかない」「やめとけ」と言われる4つの理由とホントのところ

車椅子に乗る男性

では、なぜ「障害者雇用はデメリットしかない」「やめとけ」といった声があるのでしょうか。その理由と実態を解説します。

「障害者雇用はやめとけ」と言われる理由①「給与水準が低いイメージがある」

障害者雇用のデメリットとして挙げられるのが、給与水準の低さです。厚生労働省の調査によると、平成30年(2018年)度時点での身体障害者の月平均賃金は215,000円、知的障害者は117,000円、精神障害者は125,000円、発達障害者は127,000円となっています(※)。この平均賃金に開きがある理由は、勤務形態の違いが関係しており、知的・精神障害者は、身体障害者や一般枠で就労している方と比べて、週30時間未満の短時間労働者や非正規社員の割合が高い傾向にあるからです。

(※)参考:厚生労働省 「平成30年度障害者雇用実態調査」

障害がある方の中には、フルタイム勤務が体力的・精神的に困難なため短時間勤務を選択し、自分の体調やペースに合ったはたらき方を選ぶ方も少なくありません。例えば、雇用されている精神障害者の39.7%が週30時間未満、13.0%が20時間未満の勤務という実態があり、短時間労働者の割合が高い傾向にあることが分かります。
障害者雇用だから給与が低いというわけではなく、業務内容と勤務時間によって給与に差が出るのは、一般枠でも同じことです。自身の障害の程度や状態に合った無理のないはたらき方ができるという面では、障害者雇用は魅力的な選択と言えるでしょう。

「障害者雇用はやめとけ」と言われる理由②「求人の幅が狭く単純作業が多い」「いるだけでキャリアアップにつながらない」

障害者雇用とは、障害者手帳を持っている方のみが応募できる採用枠のため、一般雇用枠に比べて求人数や職種が限定されることは確かです。しかし、障害者雇用の実績や経験のある大手企業の求人が多いため、入社後に業務の幅が広がる可能性があるとも言えます。

また、障害者雇用の求人にはルーティンワークや軽作業が多い傾向にありますが、企業側も求人の出し方や仕事の切り出し方を模索している場合があります。
企業が求人を出す際は、できるだけ応募の間口を広くするために、障害の内容や程度を問わない求人を出す必要があります。そのため、ルーティンワークや軽作業といった業務内容が多くなるのですが、採用後、継続的な勤務が見込める場合は、少しずつ仕事の幅を広げたり、キャリアアップを目指すこともできるでしょう。
はたらきながら理解を深めるために、人事担当者や上司と、キャリアについて継続的に話し合える関係性を築くことも大切です。

「障害者雇用はやめとけ」と言われる理由③「障害者雇用の採用枠は身体障害者だけ?」

障害者雇用の採用枠は「身体障害がある方だけ」という事実はありません。特に近年は、発達障害を含めた精神障害者の雇用が増加傾向にあります。2018年4月から精神障害者も障害者雇用義務の対象となったことにより、国による支援施策も強化されており、採用に積極的な企業が増えています。

ハローワークを通じた令和4年(2022年)度の障害者の職業紹介状況によると、精神障害者の就職件数は54,074件となっています。前年に比べて17.8%増加しています。身体障害+5.2%、知的障害+3.1%と比べても、精神障害者の伸び率が高いことが分かります(※)。
精神障害者の求職人数も年々増加していることから、今後も採用枠や企業の受け入れ体制の拡充が期待できるでしょう。

(※)参考:厚生労働省 「令和4年度ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況」

「障害者雇用はやめとけ」と言われる理由④「障害を公表することで居心地の悪さを感じることも」

障害者雇用とは、企業に障害があることを伝え、業務に必要な配慮を受けてはたらく雇用枠です。「いっしょにはたらく人に障害があることを知られてしまう」「職場で障害者扱いされるのではないか」など、不安を抱く方も少なくありません。
しかし、障害を公表することによって居心地の悪さを感じるかどうかは、はたらく環境によって左右されるケースがほとんどです。そのため、転職・就職活動中にキャリアアドバイザーからの情報や面接などをとおして、職場環境についてリサーチしておくことが大切です。

また、企業側が本人の許可なく社内に障害についての情報を公表することはありません。障害についてどこまでオープンにするのかは、企業と本人との合意により決めることができます。
ただし合理的配慮により、周囲から「なんであの人だけ」といった声が上がるケースもあるでしょう。周囲の理解を得るためにも、就職・転職活動で自己理解を深め、企業や関係者に障害について正しく伝えられる力をつけておくことをおすすめします。

「障害者雇用はデメリットしかない」はウソ!実はメリットがたくさんある

メリット

障害のある方にとって、障害者雇用ではたらくことは多くのメリットがあります。特に「長く安定して、無理せず自分の体調に合ったペースではたらきたい」と考えている方にはメリットが大きいはたらき方です。障害者雇用で、はたらくメリットを次の3つにまとめました。

障害の症状や特性にあった配慮を受けながらはたらくことができる

障害者雇用の大きなメリットは、障害の症状や特性にあった、合理的な配慮を受けながらはたらけることです。企業には、業務を遂行するために必要な支援や設備の提供などを、可能な範囲で提供する義務があります。
障害をオープンにすることで、通院や体調に合わせた勤務時間の調整も可能となり、周囲からの理解も得やすくなります。困りごとの相談をしやすいこともメリットの一つです。
配慮がない環境での就労は、不安やストレスを抱きやすくなります。合理的配慮が提供される環境ではたらくことは、大きなメリットと言えるでしょう。

大手企業ではたらくチャンスがある

障害者雇用に積極的な企業は、従業員数1,000人以上の大手企業が多い傾向にあります。障害者雇用の実績やノウハウがあり、受け入れの体制が整っているケースも少なくありません。福利厚生もしっかりしていますし、中には、障害者の雇用に特別に配慮する「特例子会社」を持つ企業もあります。
一般枠で転職するにはハードルが高い大手の企業であったとしても、公開されている情報が少ない障害者雇用枠であれば採用されるチャンスも高くなります。経営が安定している上に、教育体制や業務が整備されている大手企業への就職・転職は、長く安定してはたらきたいと考える方にとって不安の軽減にもつながるでしょう。

就職後もサポートを受けることができる

障害者雇用での就職・転職活動中に活用した支援サービスの中には、就職後にも継続して利用できるものがあります。
例えば、就労移行支援事業所を利用した方が、就職した半年後から利用できる「就労定着支援」、ハローワークや職業センターを通じて利用できる「ジョブコーチ」による支援、障害者雇用専門の転職エージェントによる支援など、その内容は多岐にわたります。どのサービスも企業と本人の双方に対して調整やサポートを行うことは共通しています。
特に就職直後は不安や混乱が起こりやすい時期です。困ったときに気軽に相談できるサービス機関とつながっておくことは大切です。

障害者雇用の転職・就職サポートはdodaチャレンジにお任せ

dodaチャレンジは、障害者雇用の知識や経験豊富なキャリアアドバイザーが、転職活動を一貫してサポートする、障害者のための転職エージェントです。ていねいなヒアリングを通じて障害の特性や程度にあった企業や業務をマッチング。サイトには掲載されていない非公開求人からも紹介が可能です。
企業に直接聞きにくい就労条件の確認や交渉も代行し、企業と求職者の橋渡し役となってキャリアの可能性を広げます。障害者雇用についての正しい情報を収集するためにも、専門の転職エージェントの活用はおすすめです。

まとめ

障害者雇用の実態をひもとくと、一見デメリットと思われることでも、結果的にはメリットとなることが多いことがわかります。転職活動では、障害者雇用、一般枠にかかわらず、正しい情報を知り不安や問題を解消したうえで会社選びを行うことが重要です。障害のある方は、はらたき方の選択肢の一つとして障害者雇用を検討することをおすすめします。

公開日:2023/10/3

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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