LGBTQ+の就活・転職の困り事は?カミングアウトの影響は?専門家・松中権氏に聞いた

LGBTQ

LGBTQ+においては、関連法案や当事者理解の取り組み、企業側の受け入れ体制などが進みつつあります。とはいえ、枠組みがあっても当事者を受け入れる風土や設備は、十分でないことがあるかもしれません。実際、LGBTQ+の当事者は就職や転職活動、あるいは勤務するうえで、多くの困り事を抱えるといいます。

中でも多く聞かれる課題が、「カミングアウト」です。これは性的マイノリティの人々が自身の性自認や性的指向を周囲に伝えることを指します。転職・就職活動においてカミングアウトすることで、合否に影響があることも少なからずあるようです。
認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表であり、ゲイ・アクティビストの松中権さんに、当事者が直面しやすい課題やカミングアウトによる影響について聞きました。

この記事を監修した人

松中権氏

松中 権(まつなか ごん)

1976年、金沢市生まれ。一橋大学法学部卒業後、株式会社電通に入社。海外研修制度で米国ニューヨークのNPO関連事業に携わった経験をもとに、2010年、NPO法人グッド・エイジング・エールズを仲間たちと設立。2016年、第7回若者力大賞「ユースリーダー賞」受賞。2017年6月末に16年間勤めた電通を退社し、二足のわらじからNPO専任代表に。LGBTQ+と社会をつなぐ場づくりを中心としたこれまでの活動に加え、日本全国のLGBTQ+のポートレートをLeslie Keeが撮影するプロジェクト「OUT IN JAPAN」や、2020年を起点としたプロジェクト「プライドハウス東京」等に取り組む。

LGBTQ+の当事者は、面接で思いきりアピールできないことも

ーー就職・転職活動において、LGBTQ+の当事者にはどんな課題がありますか?

就職・転職におけるLGBTQ+の課題は、L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)に属する人と、T(トランスジェンダー)、Q(クイア・クエスチョニング)に属する人で、やや違いがあると考えます。

まず、自認する性別が出生時に割り当てられた性別と異なるトランスジェンダー、性自認や性的指向や恋愛指向において特定の枠に属さない、またはわからないクイア・クエスチョニングの当事者は、「性別」に関することが一番の壁になるはずです。

例えば、男女で別々の制服がある職業、「助産師」など女性しか就けない仕事、または性別が明らかになりそうな職種など、自認する性別と照らし合わせてはたらけない、あるいははたらきづらい職種や業界が一定あると予想します。

一方、LGBの当事者はカミングアウトしない限りマイノリティである事実が伝わりづらいため、職種や職業が制限されることは起きづらいかもしれません。両者に共通する課題としては、入社前に当事者がはたらきやすい環境であるかを見定めることが非常に難しい点です。

ーー興味がある企業を見つけて応募や面談をするタイミングでは、どんな課題が考えられますか?

先ほどと同様に、TQの当事者は「性別」にまつわることで悩みや不安が生まれます。当事者のなかには、さまざまな状況の人がいるためです。戸籍も変更済みの人、性別を移行中の人、どちらでもない人など。

例えば履歴書においては、厚生労働省が2021年4月に性別欄から男女の選択肢をなくした履歴書の様式例を新たに示していますが、性別欄のあるエントリーシートを採用している企業もあります。

履歴書で性別を明かさずに済んでも、面接の場では就活スーツや髪型で迷います。自認している性別で面接に臨みたいけれど、それが法律上の性別と一致しない場合、面接官にけげんな目で見られないか、性別に関して質問されないかと不安を抱えてしまうはず。結果的に本来の姿を隠して、法律上の性別に合わせた服装や髪型で面接に臨む人が少なくありません。

一方、LGBについては自身が明かさない限り、マジョリティである異性愛者だと認識される可能性が高まります。入社の段階で一緒に暮らしているパートナーがいる、またはパートナーとの間に子どもがいるような状況であっても、事実を伝えることが難しいケースが多いと思います。これはTQの当事者にも言えることです。

また、すべての当事者に関わる懸念として、履歴書や面談で自身を思う存分アピールしづらい点もあげられます。例えば、当事者の中には、学生時代にLGBTQ+関連のサークル活動に精力的に取り組んでいたり、自分らしさを発揮して過ごしたいとの目的から海外留学したり、現地で性の多様性について学んでいたりする人もいますが、それらを語ることは難しくなります。「自分らしさ」や「これまでのがんばり」をアピールできなかった結果、採用を勝ち取れないこともあるかもしれません。

カミングアウトの有無は当事者が決めること

ーー面接でカミングアウトすると就活に不利なように思ってしまいますが、面接でのカミングアウトにはどんなメリット・デメリットがありますか?

面接

メリットでいうと、十分に自己アピールができる、本来の自分自身を判断してもらえるといった点があげられます。職場に本音を言えて、それを受け入れてくれる人がいることは、当事者にとって支えになりますし、キャリアパスを描きやすくなるでしょう。近年は職場にいる当事者同士でカミングアウトして、理解し合えるつながりを作るケースが増えていると聞きます。

一方、デメリットは採用に悪影響が出てしまうかもしれない点です。私が聞いた事例だと、特に中小企業に多いのですが、「これまでに当事者を採用したことがないから対応がわからない」といった理由で明示的に不採用になったり、面接での手応えは十分にあったけれども不採用になったりしています。

企業側は人材に関するリスクを減らしたいと考えますし、特に初めてLGBTQ+であることをオープンにしている人を採用するとなれば不安が募ります。結果的に「何か起きたら困る」「体制が整っていないから無理だ」と考え、採用を見送るケースが少なくないのかもしれません。

ーーだとすると、当事者はどのタイミングでカミングアウトするといいのか迷ってしまいますよね。

いつ、どのタイミングで、誰にカミングアウトするかは当事者が選択すべきことであり、他者の口から伝えるのはご法度ですが、職場内に当事者がいれば、まずはその方にカミングアウトをする。そうでなければ、もっとも身近な方からカミングアウトをするのが当事者の負担になりづらいかもしれません。

ただ、カミングアウトすると同時に、他人の性のあり方を許可なく第三者に言いふらす「アウティング」の懸念が起こります。例えば、身近な一人に伝えたら知らぬ間に他の人にも知れ渡っていて、影で噂話をされるようなことがあれば、当事者にとって大きなストレスとなり、時に退職に追い込まれることもあります。アウティングの悪影響については、多くの人に知ってほしいですね。

カミングアウト自体は選択肢であって、必ずしなければならないものではありません。ただ、自分らしくはたらきたい当事者にとっては、職場の人たちに本来の自分の姿を隠して嘘をつくことなくはたらきたいと思うことはあるでしょう。とはいえ、合否に悪影響が出るかもしれない、受け入れてもらえないかもしれないと考えると踏みとどまってしまうことが多いかもしれません。実情としては、特に実際に会社生活上で支障が起きやすいTQの方が、内定が出たあとに開示することが増えている気がします。

ーー面接でカミングアウトした際に、職場にオープンにすることを求められることもあるのでしょうか?

本人から性的指向や性自認をカミングアウトされた場合、それを本人の許可を得ずに他者に言いふらすアウティングは絶対にあってはならないことだという認識は少しずつ広がってきました。

一方で、男女別のトイレ、更衣室、制服等しか存在しない企業では、他の社員が安心感を得られるようにとの理由で、特にトランスジェンダーの当事者に職場において状況をオープンにすることを勧められたり、求められたりするケースがあると聞いたことがあります。

もしそのような提案があったとしても、本人の意思に反するようなカミングアウトはする必要がありませんし、それを強要することもあってはならないと考えます。

就職後は「人間関係」や「キャリアパス」で悩みやすい

ーー「性自認」や「性的指向」は仕事に直接的には関係ないと思いますが、当事者であることをカミングアウトせずに就職した場合、実際にはどんなことが起こりますか?

悩む女性

人間関係や制度面の利用、キャリアパスなど、さまざまな点で困り事が生まれます。企業では、チームで進める仕事が多くあり、信頼関係の構築が求められます。その際、日常会話のなかで相手のキャラクターや価値観を捉えながら、関係をつくっていくことが大いにあるでしょう。年齢を重ねてくると、自然とライフプランの話題も出てきます。

しかし、多くの当事者の場合は本当の自分の姿を見せられず、プライベートの話題に関してはウソをつかざるを得ません。パートナーの存在や一緒に暮らしていることを隠す、あるいは彼氏がいるけれど彼女がいることにするなど。例えば、一緒に暮らしている相手が会社内にいる場合、同じ住所を伝えることができず、それぞれが賃貸マンションを借りるなど、本来必要のない手間やコストが発生しているケースもあります。

一緒に住んでいる婚姻関係と同然の相手がいても会社内のパートナーシップ制度が使えない、社宅を利用できない、パートナーや子どもに何かがあったときに本当の理由が言えない、休みが取りづらい、といった問題も起きてきます。それらが重なると、同じチームのメンバーや上司などから怪しまれることもあるかもしれません。

ーーキャリア面での問題はありますか?

キャリアパスにおいても、思い通りにならないことがあり得ます。例えば、商社に勤めている場合、何度か海外駐在を経験してキャリアアップしていくケースがよくあります。その際、異性愛者なら家族同伴で現地に移り住み、家族向けの家を賃貸するなどの補助を受けることができます。

一方で、同性愛者の場合は、パートナーも同伴でとなれば、そのタイミングでカミングアウトが必要です。ただし、カミングアウトが受け入れてもらえたとしても、世界には同性愛者であることが判明しただけで有罪になる国が70ヵ国以上あり、中には極刑が科される国もあります。これらは、基本的に一時的にそこに住んでいる外国人にも適用されます。

アフリカや中東の国にそういったケースが多いため、駐在先が該当するエリアであると、パートナーと一緒に滞在することは難しくなります。そういった諸々を考慮して、「事実を言わずに適当な理由をつけて断る」人も出てきます。

積極的に企業の情報をキャッチしよう

ーー近年はダイバーシティが浸透し、その中でLGBTQ+への理解も広がりつつあります。どうすれば理解ある職場かどうかわかりますか?

大企業を中心にLGBTQ+への取り組みのムーブメントは、加速度的に進んでいると思います。2020年に改定された「職場におけるハラスメント関係法令(通称・パワハラ防止法)」には、SOGIハラとアウティングの防止が新たに盛り込まれましたし、各社が公式ホームページやSNSなどを通じて、LGBTQ+への取り組みを積極的に発信する事例も増えてきました。

また、私が別途代表を務める一般社団法人work with Prideにて行っている活動の一つに、LGBTQ+に関する取り組みの評価指標「PRIDE指標」があります。2016年から開始したこの活動では、取り組みを推進している企業をゴールド・シルバー・ブロンズの認定企業として表彰しており、応募企業が毎年増えています。

さらに、自社単独の取り組みでできる範囲を超えて、他のプレイヤーと力を合わせながらLGBTQ+の人々が自分らしくはたらける職場・社会づくりの実現に中長期的にコミットメントする企業を認定する「レインボー認定」も2021年から開始し、認定企業が増えています。

こういった指標は重要な目安にはなりますが、当事者にとってのはたらきやすさを保証するものとは言えません。例えゴールド認定された企業でも、LGBTQ+を受け入れる枠組みがある、積極的に取り組んでいる事実があるだけであり、全社的に風土が醸成されているかを測ることはできません。東京の本社や支社では風土が醸成されていても地方支社では理解が追いついていないこともあります。

制度が整っていても、それがイコールはたらきやすさとは言えないため、職場を探すにあたって苦労する人が多い印象があります。中小企業ではLGBTQ+について担当するダイバーシティ&インクルージョン関連の部署がなく、人事や総務でまかなっていることも多いです。そういった状況を踏まえると、やはり当事者が積極的に情報を取りにいかなければ、自分にマッチした企業を見つけるのは難しいかもしれません。

ーー当事者が就職・転職する際にカミングアウトについて悩んだとき、信頼して相談できる窓口はありますか?

以下のような窓口は、電話や対面で誰もが利用できます。専門的な知識を持つ人に相談したいときは活用してみてください。


ーー就職・転職において、カミングアウトを検討している方々にメッセージをお願いします。

合否への影響やアウティングの懸念を考えると、どうしてもカミングアウトは慎重にならざるを得ないと思います。とはいえ、LGBTQ+当事者への理解浸透や企業の取り組みが活発化している現在、身の回りの理解者が増えているのは事実です。まずは当事者同士のつながりを作り、情報を得ながらカミングアウトのタイミングや方法を検討してみてください。ひとりひとりが置かれている環境も違いますので、無理をする必要は全くないと思います。

もし、希望の企業に就職・転職できたとしても、就業後に環境が合わずストレスを感じてしまうこともあるでしょう。そのときは、限界がくる前に転職を検討するのも一つの方法です。専門家に相談できる窓口なども活用しながら、ご自身にとって最良の選択肢を探ってみてください。

障害とLGBTQ+への理解が深い企業への転職を

笑顔で相談にのる女性

LGBTQ+をはじめとする性的マイノリティの方で、職場や学校での心理的負荷によって精神障害を発症し障害者手帳を取得した方や、免疫機能障害等の身体障害がある方の場合、「障害者採用枠」で転職・就職することも選択肢の一つです。

障害者採用枠での転職を成功させるには専門家への相談がベスト

「障害者採用枠」とは、障害者手帳を持つ方だけが応募できる採用枠のことです。障害がある方の雇用を前提として求人が行われているため、就職後も障害や疾患について配慮を受けられるなどのメリットがあります。

障害者採用枠で転職するには、障害者雇用に関する専門知識を持つ人のアドバイスがあると転職活動がスムーズです。例えば、障害者雇用枠の採用基準を一般採用と同等としている企業への転職活動の対策や面接時の給与交渉といったものは、ご自身だけで行うことが難しい場合もあります。そんなときは、専門家に相談しながら転職活動を進めることでさまざまなサポートを受けられ、自分だけでは見つけられない求人と出会えるかもしれません。

dodaチャレンジでは障害者手帳をお持ちで、かつLGBTQ+をはじめとした性的マイノリティである方の転職や就職活動を支援しています。また、就職・転職サポートではLGBTQに限らず、さまざまなSOGIに起因した心身の障害にも配慮したサポートを行っています。LGBTQ+フレンドリー企業への紹介だけでなく、はたらく人の障害に対する配慮も含め、総合的なキャリアプランを相談できます。障害者雇用についてはdodaチャレンジにおまかせください。

公開日:2023/11/29

dodaチャレンジで、専任のキャリア
アドバイザーに転職・就職活動を相談する

会員登録(無料)

まずは就労準備トレーニング。実際の
仕事と同程度の実習で「はたらく力」を。

就労移行支援
「ミラトレ」について