大人の吃音の特徴とは?障害者手帳の申請やはたらく上で大切なこと

はらたく上で大切なこと

吃音(きつおん)のある方は、話すことに苦手意識を感じることがあります。そのためコミュニケーションなど、仕事で困りごとを抱える方も少なくありません。
この記事では、大人の吃音の特徴や、原因とともに、吃音のある方がはたらく上で大切にしたいポイントについてご紹介します。吃音と障害者手帳の関係についても解説しますので、取得を検討されている方は参考にしてください。

吃音とは

吃音(きつおん)とは、話すときに言葉がなめらかに出てこない発話障害の1つです。
吃音は「どもり」とも呼ばれていて、言葉に詰まったり、最初の一音を繰り返したりするなどの症状があります。

吃音の9割は、2~5歳の幼児期に発症する「発達性吃音症」です。おおよそ8%の幼児期の子どもが、一時的に吃音を発症するとも言われています。
子どもに見られる吃音の7〜8割は自然に治りますが、残りの2~3割は症状が固定化し、大人になっても吃音の症状が残る場合があります。また、環境の変化やストレスなどにより、症状が再び現れるケースも少なくありません。

大人の吃音とは

会話をする女性

幼児期に発症し、成長するにつれて症状が治っていくことの多い吃音ですが、中には大人になってからも吃音症が続き、生活や仕事で困難を抱える場合があります。
また、大人になってからの怪我や病気、ストレスがきっかけとなり「獲得性吃音」を発症する場合もあります。これを大人の吃音と言います。

大人の吃音の特徴

吃音の症状が大人になっても続いている方は、長年の経験からさまざまな工夫をしながら生活しています。例えば、人との会話を意識的に減らしたり、よく話す内容を暗記していたりすることで、吃音が目立たず、スムーズに話しているように見せていたりします。

また人によっては、会話でのコミュニケーション場面や状況そのものを避ける「回避行動」を取ることもあります。しかし、仕事などの社会生活では、回避行動を取ることが難しい、もしくは不可能なことが多く、その結果ストレスを抱えやすくなることが大人の吃音の特徴です。

吃音の原因

吃音には、子どものころに発症する「発達性吃音」と、大人になってから発症することが多い「獲得性吃音」の2つがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

発達性吃音

発達性吃音は、吃音の約9割を占める症状です。その原因は明らかになっていませんが、「体質的(遺伝的)要因」「発達的要因」「環境要因」という3つの要素が、互いに影響しあっているのではないかと考えられています。

それぞれの要因の特徴は以下の通りです。
  • 体質的要因:本人の体質によるもの
  • 発達的要因:身体や認知、言語、情緒が急速に発達する影響によるもの
  • 環境要因:身の回りの人たちとの関係や、生活での体験によるもの

獲得性吃音

獲得性吃音は、怪我や病気、ストレスなどによって発症する吃音です。発症時期は青年期以降(10代後半~)と発達性吃音と比べて遅いことが特徴です。

獲得性吃音には、以下2つのタイプがあります。
  • 神経原性吃音:頭部の怪我や脳腫瘍、脳血管障害、薬物の使用などによって発症
  • 心因性吃音:トラウマやストレスなど、心理社会的要因によって発症

大人の吃音においてはたらく上で大切なこと

話し方に悩む人

吃音のある方が無理なく仕事を続けるためには、職場での環境調整やコミュニケーションでの工夫をすることが大切です。

環境調整

環境調整とは、困りごとを抱える本人ではなく、周囲の対応や環境を変えることで、症状を軽減しようとする取り組みのことを言います。吃音の症状により仕事に支障が出ている場合は、本人の心身への負担を減らし、話しやすい環境を整えることが大切です。
環境調整の具体的な方法は、以下のようなものがあります。

はたらく環境の調整

  • 吃音や喋り方の特徴について職場に伝えておく
  • どのような困りごとがあるか、どのような配慮があると仕事がしやすいかを伝える
  • コミュニケーション手段の代替案を考える

業務内容の調整

  • 吃音により難しい業務(電話や会話がメインの仕事など)の軽減、または別の仕事に替えられないか相談する
  • 業務の進め方を見直す

伝える手段を工夫する

吃音のある方ができる工夫は「うまく話すこと」よりも「伝えること」に意識を向けることです。言葉だけでなく、ジェスチャーや表情、写真や図などを使って相手に伝える工夫をしてみると、吃音の影響が軽減する場合があります。
また、その場でうまく伝えられなかったときには、あとからメールを送るなど、正しく伝わるためのフォローをすると良いでしょう。

吃音の方に向いている仕事・向いていない仕事

吃音のある方が仕事を続けるためには、はたらきやすい職場環境や職種を知ることが大切です。吃音の症状の程度や出る場面はそれぞれ異なるため一概には言えませんが、吃音の方に向いている・向いていない仕事の傾向は次のとおりです。

吃音の方に向いている仕事

吃音の方に向いているとされる仕事は、比較的コミュニケーションが少ない仕事です。一人、または少人数ではたらく職種や、話すことよりも専門的なスキルや知識が重視される職種は吃音の影響が少ないと言えるでしょう。

職種例:プログラマ、エンジニア、製造業、警備員、経理、Webライター、Webデザイナーなど

吃音の方に向いていない仕事

セールスや接客業では、吃音の症状で仕事がスムーズに進まない場合があります。人との接点が多く、臨機応変な対応が必要となる場面では、吃音に対処しにくくなる傾向があります。

職種例:営業、サービス職、販売業など

大人の吃音と障害者手帳

吃音の症状のために就労が難しい、職場での合理的配慮が受けられないなど、診断書の提出だけでは仕事や生活の問題が解決できない場合は、障害者手帳の申請ができます。

吃音で申請が可能な手帳は「身体障害者手帳」と「精神障害者保健福祉手帳」です。
ただし、身体障害者手帳は、脳卒中などによる失語症を想定しており、言語症状が重症な場合のみ交付されることが多いとされています。そのため吃音のみで身体障害の言語障害に該当するケースはごく少数と言えるでしょう。

幼児期からの「発達性吃音」は発達障害者支援法の支援対象となり、症状が一定の基準に達している場合は、精神障害者保健福祉手帳の取得ができます。

また、吃音による心的不安やストレスにより、うつ病や不安障害などを発症した場合は、吃音ではなく精神疾患で手帳を申請できます。
なお、手帳を取得するか否かは本人の意思に委ねられています。

障害者雇用などの支援を活用する

障害者手帳を取得している場合は、障害者雇用枠での就労が可能となります。障害者雇用とは、職場で合理的配慮を受けながらはたらくことができる採用枠です。
吃音により仕事での困りごとが多い場合は、自身の特性に合った工夫やサポートが必要です。障害者雇用ではたらくことで、必要な支援を受けやすくなるメリットがあります。

ただし、吃音の症状や程度はさまざまであるため、申請することで必ず障害者手帳を取得できるわけではありません。取得を検討している場合は、かかりつけ医などの専門家に相談してください。

はたらく上で困りごとが解消できない場合は障害者雇用を活用

吃音のある方は、自身の特性を知り、能力を発揮できるよう環境整備や工夫を行うことが大切です。それでも困りごとが解消できず、心理的負担が大きい場合は、障害者手帳の取得と障害者雇用を活用することをお勧めします。
合理的配慮を受けることで、周囲の理解やサポートを得ながらはたらくことが可能となります。

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まとめ

大人の吃音は、本人が工夫しながら生活や仕事をしているケースが多く見られます。障害があることで、できることを制限したり、仕事や環境への適応できず、一人で苦痛を抱えていることもあるでしょう。
吃音の症状に悩んでいる場合は、周囲にサポートを依頼するなどの工夫を行い、スムーズにコミュニケーションが取れる方法を見つけることが大切です。「どのような方法があるか分からない」という方は、障害者専門の転職エージェントに相談してみてください。

公開日:2024/1/5

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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