聴覚障害のある方が仕事で抱える悩みは?おすすめの仕事の種類と注意点をご紹介

聴覚障害のある方

聴覚障害のある方が就職・転職を考えるとき、どのようにして職場探しをするとよいのでしょう? 勤務条件や待遇のほかに、障害への理解や合理的配慮……意識すべきポイントが多く、苦労することも少なくないと思います。
そこでこの記事では、聴覚障害者の方が仕事で悩みがちな点や向いている仕事、職場探しにおける注意点などをご紹介します。これから就職・転職を検討している聴覚障害者の方は、ぜひご参考にしてください。

聴覚障害者の雇用状況

まず、聴覚障害者の方の雇用状況の現状や、聴覚障害者の方の就業件数が多い業界をご紹介します。

企業に勤めている聴覚障害者の数

厚生労働省「令和4年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業ではたらいている聴覚障害者の総数は32,059人でした。なお、この人数には聴覚障害に加え、平衡機能障害のある方も含まれています。

聴覚障害者の活躍が多い業種・業界

雇用されている産業別に見ると、もっとも多いのは製造業で12,961人、次に医療・福祉の3,403人、それに次いで卸売業・小売業の3,165人となっています。これらの業種で、聴覚障害者がはたらきやすい業務が比較的多く用意されていたり、聴覚障害に対する適切な理解があったりすることが想定できるでしょう。

参考: 令和4年 障害者雇用状況の集計結果 | 厚生労働省

聴覚障害の区分と特徴

聴覚障害とひと口にいっても、その特徴は人によって異なりますが、基本的には以下の3つの障害特性に大別されます。ここでは、聴覚障害のおもな症状やその特徴をご紹介します。

ろう者

ろうの方とは、聴力レベルが100dB以上で両耳がほとんど聞こえない状態・まったく聞こえない状態の人を指します。日常の会話に手話を使用している方が多いとされています。
また、「ろう」という言葉は、聞こえない状態を指すこともあれば、先天的に聴覚障害を持つ方を指す場合もあります。

難聴者

難聴とは、聴力はあるものの多くの音が聞き取りにくい状況を指します。難聴はさらに、程度や状態に応じて以下の3つに分けられています。

  • 伝音性難聴
  • 感音性難聴
  • 混合性難聴

中途失聴者

音声言語(音を聞き、言葉を話せる状態)を獲得した後、つまりある程度の年齢になってから聴力を失ったり、聴力が弱くなったりした方を指します。その原因は病気や事故、加齢などと多岐にわたります。なお、中途失聴の原因となる病気には、以下のようなものがあります。

  • 中耳炎
  • 感染症
  • 騒音性難聴
  • 突発性難聴 など

上記いずれのケースでも、言葉を話せる場合もあれば喋れない場合もあり、喋ることができても積極的には喋らない場合もあります。言葉を話せる場合は、周りから聴覚障害者だと気が付いてもらいにくいことでお悩みを抱えがちになります。

聴覚障害のある方が抱えがちな悩み・困りごと

聴覚障害があることで、仕事でもいくつかの困りごとが生じてしまいます。ここでは、聴覚障害のある方が仕事のなかで抱えがちな困りごとについてご説明しましょう。

  • 複数人での会話や会議についていけない
  • 会話中の質問を理解したり、周囲の人との認識をすり合わせたりすることが難しい
  • 同僚との雑談が少なくなりがち
上記のような困りごとが多くなってしまうと、業務上のトラブルやストレスにもつながる可能性があります。

聴覚障害のある方が難しいと感じる仕事内容

聴覚障害のある方が特に、困難を感じやすい仕事内容にはどんなものがあるのでしょうか。

電話対応や接客対応など口頭でのコミュニケーションを必要とする仕事

人と会話することがメインとなる業務は、話を聞くことも重要となるため困難が増えがちです。具体的には、電話オペレーター、サービス業における接客業務などが挙げられるでしょう。

外出機会が多い仕事

外勤営業や現場業務など、外にいることがメインとなる業務は、危険が迫っていても気付けないことがあるため細心の注意が必要となります。

ただし、上記の業務でも障害の程度によっては補聴器を用いれば困りごとを減らせる場合があります。また、できないことの範囲も、個々の障害の程度や状況次第で異なります。

聴覚障害のある方に向いている仕事

データ入力をする人

聴覚障害者の方の仕事における得意分野は、1人でする作業やデスクワークなど集中力が求められる場です。また、集中力を発揮した結果、相手に正確な情報を伝えられるという点も長所となり得ます。
その「強み」を活かせる業務内容であれば、活躍することが期待できるでしょう。ここでは、聴覚障害のある方に向いている仕事や職種、業務内容などご紹介します。

データ入力

決められた数字や値などを、パソコンなどで正確に入力していく作業です。タイピングのスピードや正確さ、集中力を活かせる仕事です。

オフィス事務

事務というと接客応対や電話対応などが求められるイメージがありますが、現在はパソコンの使用が中心となる業務も多いため、聴覚障害のある方にも活躍の場が用意されています。

Webデザイナー・Webライター

Webサイトを制作したり、Webに掲載する記事を執筆したりする業務です。こちらもパソコンの使用がメインとなるため、聴覚に頼らず業務を進めやすいでしょう。

エンジニア・プログラマー

コンピュータ上で動かすソフトウェアなどのプログラムを組み立てる業務です。こちらも、パソコンを使っての作業が中心となります。在宅勤務OKの求人も多い仕事です。

上記でご紹介した仕事をするにあたっては、打ち合わせなど口頭でのコミュニケーションが必要なシーンもあります。そのような場合には、音声認識ソフト(文字起こしツール)や筆談ボード・電子メモパッドなどのITツールを活用することで、ある程度の対応が可能です。
また、チャットやメールなどテキストベースでの連絡手段も普及が進んでいるため、過度な心配は不要でしょう。

聴覚障害のある方が就職先・転職先を探すときの注意点

聴覚障害のある方が就職や転職を検討するときは、なかなか職場が見つからず苦労することもあるかと思います。しかし、障害者雇用の推進がより一般化している現在においては、以前と比べて有利に就職活動を進められる条件が整ってきていることも考えられるでしょう。
ここでは、聴覚障害者の方が就職活動をする際の注意点についてご紹介します。

自分の障害とスキルについて理解する

まず、ご自身の障害の種類や程度を改めて把握し直してみましょう。その上で、どのような仕事なら安定して長くはたらくことが可能かを考えます。
「障害の影響で会話が苦手だが、パソコンスキルはある」など、ご自身が持っているスキルや仕事に活かせるスキルを再認識し、適職を考えていくと良いでしょう。

職場の障害者理解や機器・設備の設置状況について確認する

就職活動のゴールには就業することだけでなく、その後長く安定してはたらくことまでが含まれます。就職後に職場へ長く定着するには、職場内の理解も必要となるでしょう。

各職場の聴覚障害への理解を推し量るには、「情報保障」への対応状況を確認する方法がおすすめです。情報保障とは、障害などで必要な情報を得られない人に対し、本来得られるべき情報の代替手段での提供が保証されていることを指します。
この情報保障に対応している企業であれば、聴覚障害への理解が深いことが期待できるでしょう。聴覚障害者の方が職場探しをする際は、この情報保障への対応状況をまず見てみることをおすすめします。

また、支援機器の活用についても確認してみてください。たとえば音声認識ソフト(文字起こしツール)、筆談ボード・電子メモパッドなどの利用が可能かどうかをまず調べましょう。加えて、客人の来訪を知らせる聴覚障害者用の光るチャイムや、災害などの危険を知らせるアラームランプなどが設置されているとより安心です。

聴覚障害のある方が就職・転職の際に利用できる支援機関

聴覚障害者の方の就活には、ご自身だけで進めるのは難しいことも少なくありません。障害のある方の就職・就労支援を行っている機関を利用することをおすすめします。

障害者就業・生活支援センター

障害のある方の生活や就労に関して、総合的な支援を行っている機関です。社会福祉法人や公益法人、NPO法人などが運営し、障害のある方の困りごとや悩みに対し相談を受けるなどの支援活動を行っています。

ハローワーク(公共職業安定所)

国が運営する就労支援機関で、一般的な就職・転職をサポートしてくれるほか、障害者の方専用の相談窓口もあります。窓口担当者は障害者の就職に関する専門知識があり、個別の相談に応じてくれます。

就労移行支援事業所

一般の企業や団体への就労をめざす障害者の方のために、就労に必要な技能や知識の習得をサポートする施設です。定められた2年間という期間内で、職業訓練や就労支援、就労後の定着支援などを受けられます。

障害者向け就職・転職エージェント

就職・就労支援のイメージ

いわゆる就職・転職エージェントの障害者版で、障害者手帳を持っている方専門の就職・転職支援を行っている民間のサービスです。基本的に無料で利用でき、障害者雇用枠での就職・転職に関する総合的なサポートを実施しています。
専任のキャリアアドバイザーが付き、求職者の方の障害特性や意向に合わせた求人紹介を行ってもらえるほか、就活に欠かせない面接対策などのアドバイスも受けられます。

まとめ

聴覚障害のある方が一般企業ではたらく場合、ご自身の障害の程度や特性を理解し、必要な条件に合った仕事を見つけることが大切です。しかし、就労する障害者への配慮がどのように行われているかは、実際にはたらき始めてみないと分からない部分も多く、そのためにミスマッチも起こりがちです。
就職前にしっかりと情報収集をしたい場合には、障害者の就職事情を熟知した専門の支援機関に相談し、支援を受けながらの就職・転職活動をするのがおすすめです。

dodaチャレンジは、聴覚障害者の方の症状や特性を理解し、適職へのアドバイスを行えるキャリアアドバイザーが在籍している障害者向けの就職・転職エージェントです。個々のお悩みや困りごとを詳細にヒアリングし、一人ひとりに合った求人情報をご提供していますので、ぜひお気軽にご相談ください。

公開日:2023/4/4

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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